勝手な値引き
社長が必死になって会社の利益を確保しようとしても、実際の現場で、自ら利益を放棄していることがあります。それが、営業マンの勝手な値引きです。これをチェックするには、粗利率を常に管理し、異変に気づくことが大切です。
勝手な値引き
私 :「社長、先月の粗利率が1%下がっていますが、何かありましたか。」
社長:「特に、何もないと思うが。」
私 :「仕入単価が、上がりましたか。」
社長:「上がったという報告は、聞いていないが。」
私 :「それでは、何が要因だと思われますか。」
社長:「そうだな・・・。」
仕入をする際は、業者と仕入れ金額の交渉を行い、少しでも安く仕入れられるように努力をする。しかし、その努力が一瞬にして、ふいになることがある。それが、販売のときである。
営業マンの言い分としては、同業他社との競争に勝つためには、多少の値引きやサービスは仕方がないと言う。また、お客様のことを考えると、高い値段では売れないと言う。
果たして、本当にそうなのだろうか。少なくとも私は、そうは思わない。単に、売れない理由を、価格が高いということにすり替えているにすぎない。
例えば、同様なものを、他社が1,000円、当社が1,100円で販売しており、売れない理由を改善するなら、当社が900円で販売すれば良い。しかし、他社で買っている人たち全てが、他社からの購入を止めて、当社で購入してくれるだろうか。そんなことはない。
また、お客様のことを考えて安く売ると言う心理は、お客様から良く思われたいという営業マンの自己満足である。
企業が販売単価を決めるには、それなりの理由がある。特に中小企業の場合は、大手のように大量に仕入れることはできないので、仕入単価が高くなる傾向が強い。
また、大量に販売できるなら、薄利でも固定費が賄える粗利額が稼げるが、大量に販売できないなら、固定費は賄えない。
つまり、販売価格は、その企業の事情を加味した適正な価格で販売しているのであり、単に営業マンの個人的な考えで販売価格を下げてしまえば、お客様は安いと喜んだとしても、自分の会社には悲劇でしかない。
会社の利益が少ない、もっといえば赤字になるなら、当然社員の給与は増えることはないし、リストラまで踏み込まなければならない場合もある。更に連続して赤字が続けば、会社の存続すら難しくなる。そして、最悪倒産してしまえば、最終的にお客様に多大な迷惑をかけてしまう。
結局、勝手な値引きは誰にとっても良いことはない。だから、勝手な値引きは、お客様の前にいる時だけの営業マンの自己満足なのである。このようにならない為にも、常に会社として数字を管理し、利益の大切さを社員に言い続ける指導が大切である。