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経営者が抱くリスケジュールの不安

平成21年12月の中小企業金融円滑化法施行以来、中小企業にリスケジュール、つまり銀行融資の返済の減額や猶予、という手法が中小企業経営者に広まり、多くの企業が銀行と交渉し、リスケジュールを行いました。

 

この法律が施行される前はリスケジュールはできなかったのかというとそういうわけではなく、以前からリスケジュールというやり方はあったのですが、ただリスケジュールについての知識がない方が多く、また銀行への返済を止めるとその後どういうことが起こるのかという不安もあり、リスケジュールを行う企業は少なかったのです。

 

ただ、現在でもリスケジュールを行うことにより、その後どういうことが起こるのか、不安を抱えていらっしゃる方は多いと思いますので、そこをお話します。

 

多くの経営者が不安に思うことで代表的なものは、次のとおりです。

 

  1. 二度と銀行から融資が受けられなくなる。
  2. どこの銀行からも融資が受けられなくなる。
  3. リスケジュールをしたという情報が世間に広まってしまう。

 

それぞれの不安につき、解説していきます。

1.二度と銀行から融資が受けられなくなる。

リスケジュールの期間中は、基本的に新しい融資は受けられません。

 

それはなぜか。通常時においては、毎月の返済により、それぞれの銀行が企業に出している融資残高が減少していくため、それを見て、その減少分を埋める、もしくは企業の成長状況によってはそれ以上の融資を銀行は出しやすくなります。

 

しかしリスケジュールを行なうと、毎月の返済がなくなる、もしくは少なくなるため、融資残高は減少していかなくなります。そこに新規融資を出すと、融資残高は増える一方となります。そうすると銀行のリスクは高まってしまうことになります。

 

そのため、リスケジュール期間中は、基本的に新しい融資は受けられないことになります。

 

ではリスケジュール期間中に経営改善を行い、事業で利益を上げられるようになり、そこから銀行への返済が再開できるようになると、どうなるのでしょうか。

 

返済が再開すると、返済するにつれて融資の残高は減少していくことになります。それであれば、その減少分を埋める融資を銀行は出しやすくなり、企業の成長状況によっては、それ以上の融資も銀行は出しやすいことになります。

 

リスケジュールを行うと銀行から二度と融資が受けられなくなるのではなく、リスケジュール期間中は融資は基本的に受けられないが、リスケジュールを終了して銀行への返済が再開されれば、再び銀行から融資を受けられることになります。

2.どこの銀行からも融資が受けられなくなる。

例えばある企業がA銀行とB銀行から融資を受けていて、A銀行の融資をリスケジュールすると、B銀行から融資が受けられなくなるのか。

 

A銀行とB銀行との間で情報のやり取りは、企業の同意がない限りは銀行はやってはいけないことになっています。

 

そのため、A銀行でリスケジュールを行ったから、それが自動的にB銀行から融資が受けられなくなる、ということにはなりません。しかしリスケジュールは、基本的に全ての銀行一律で行うことが原則です。

 

銀行ごとにリスケジュールを行う銀行、行わない銀行があると、リスケジュールを行う銀行で大きなリスクをとることになり、銀行間で不公平になります。

 

そのため銀行はリスケジュールの申込みがあったら、他の銀行ではどうなのか、必ず聞きますし、また企業の同意の上、他の銀行に問い合わせることも多くあります。

 

また企業にとっても、ある銀行ではリスケジュールを行って、別の銀行でリスケジュールを行わないのであれば、返済減額が中途半端にしか進まず、中途半端なリスケジュールになります。

 

リスケジュールを行う企業は資金繰りが厳しい企業ですから、例えば返済の減額を半分にするだけで済ませるような中途半端なリスケジュールでは資金繰りの改善はあまり進まず、返済を0円近くまで一気に減額する、もしくは0円にする、リスケジュールを行うべきです。

 

そこを考えても、リスケジュールは基本的に全ての銀行、一律で行うことが原則となります。

 

では、めったにないケースですが、ある銀行でリスケジュールを行って、別の銀行でリスケジュールを行っていないケースでは、そのリスケジュールを行っていない銀行では融資を受けられないのか。

 

私が関わったケースで、ある銀行ではリスケジュールをはじめたばかりで、その企業に、リスケジュールをしていない銀行(例:手形割引のみ、預金取引のみ)が新規融資を売り込んできて、融資を受けることができたケースがあります。

 

このように、ある銀行でリスケジュールを行ったから、他の銀行でも融資が受けられなくなるということはないのですが、しかし融資残高推移の資料を銀行が見たり、返済の動きを預金通帳で確認されたりして(日本政策金融公庫は他の銀行の返済の動きを預金通帳で確認します)、リスケジュールをやっている事実が分かってしまうことは多いです。

 

リスケジュールをやっている事実が分かったら、リスケジュールを行っていない銀行でも融資審査は厳しくなります。

3.リスケジュールをしたという情報が世間に広まってしまう。

これも、リスケジュールを検討する経営者が、よく不安に思うことの一つです。そもそも、リスケジュールを行ったことは、どういう流れで世間に広まってしまうのか、考えてみます。

 

それは次の2つとなります。

 

  1. 銀行から世間に広まる。
  2. 企業自身が世間に広める。

 

この2つについて考えてみます。

 

(1)銀行から世間に広まるのかどうかですが、まず何よりも、銀行には守秘義務があります。

 

ある企業がリスケジュールを行ったという情報は、銀行は外部に漏らしてはなりません。もしそのようなことが起こったら、大問題になります。だから、企業がリスケジュールを行ったということは、銀行から世間に広まることはありません。

 

そう考えると、(2)企業自身が自ら世間に広めてしまうのでなければ、リスケジュールをしたという情報は世間には広まらない、ということになります。

経営者はリスケジュールの知識の取得を

以上、リスケジュールを行うにあたって企業が抱きがちな不安を3つ、その不安は、杞憂でしかないことを述べました。

 

しかしリスケジュールは、銀行からなかなか融資が受けられない中で、大きくのしかかる返済負担を軽減して資金繰りをまわしていくための、「次の手段」として考えるべき手であります。企業は、リスケジュールは行うべきか行わないべきか、銀行の融資スタンスや資金繰り状況、損益状況などを見て、常に考えていかないといけません。

 

安易なリスケジュールは慎まなければなりませんし、だからといってリスケジュールすべきタイミングでリスケジュールを行わず、リスケジュールを行おうとする時にはほとんど現金がなかった、というリスケジュールのタイミングの遅れ、ということも避けなければなりません。

 

リスケジュールのタイミングをどう図るか、経営者にとってはなかなか難しいものがあります。

 

そしていざ、リスケジュールを行う時、ほとんどの企業にとっては初めての経験になりますので、ここで述べたような不安に陥りがちになります。そこを払拭するために、ここで述べた知識を経営者は得る必要があります。

 

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