財務分析で収益性と安全性の実態を明らかにする
現状の問題というよりは今後、会社をどのように経営していくべきか?こうした社長の漠然とした不安によるご相談が多くありますので社長の「漠然とした悩み」を解消していくための武器、すなわち【経営判断ツール】について解説していきましょう。
「財務分析」って何?とお感じの社長もいらっしゃるでしょう。簡単に言えば、決算書(貸借対照表と損益計算書)分析で会社の実態をつかむことが財務分析の目的。
そして以下の3つの分析から「実態」を明らかにしていくことができます。
- 企業の収益性
- 企業の安全性
- 企業の成長性
上記の他にも、生産性を分けて分析することもありますが、ここでは「収益性」「安全性」と「収益性と安全性の関連」だけをあげてみます。
企業の収益性
企業の収益性の良し悪しは、次の2点で見るとよいと思われます。
A: 利幅の厚さ
B: 資本の回転速度
利益率、回転率を意識されていらっしゃる社長は、常に仕入から販売代金回収までのサイクル、資本の回転速度の短縮化を考え、実行されているようです。
粗利益10%の商品が10億円分あるとします。
販売代金の回収期間は6ヵ月で、その後も同じ回転速度で売れ続けて販売代金を全て回収できれば、年間で20億円の売上がたち、粗利益2億円分のキャッシュが産まれます。
ところが、全ての代金回収に2年6ヵ月かかるとどうなるでしょう?
単純計算ですが、1年あたり、10億円÷2.5年=4億円の回収粗利益4,000万円分のキャッシュしか産まれません。資本回転速度が5倍も違いますね。また、後述いたしますが、回転率というモノサシも重要になってきます。
企業の安全性
銀行は貸借対照表の自己資本比率を見ているのですが、自己資本(返済不要の資本)÷総資本(自己資本+他人資本)の「率」が高い企業は安定しているということが言えます。
経営判断ツールとしての「財務」を引用します。
→ https://www.extend-ma.co.jp/20120413/
企業の安全性とは、決算書の貸借対照表にあります、
- お金の「使い方」つまり【運用】が左側にある
- お金の「源泉」つまり【調達源】が右側にある
このように左右バランスになっている運用と調達のバランス、さらには、短期的のみならず長期的に安全かどうかで判断します。
自己資本比率の増加を銀行から指摘を受けてお困りの社長も多いことでしょう。具体的には、現状、(実態)債務超過でも自己資本比率20~30%を目指す経営をするようにと発破をかけられていませんか。
企業の収益性と安全性の関連
事例で説明します。収益性と安全性の関連として、最近ご相談として受けたものに商品回転が長い、また収益を重視するために回収期間を長期化、支払期間を短期化させている。
そして資金繰りが厳しくなり「もっと借りることができるか」という懸念からの相談でした。
収益を重視するあまり、回収の長期化、支払いの短期化、とは仕入代金は現金による前金処理で(単価を下げるために必要以上に)棚卸資産(在庫)を持っていることが背景にありますが、銀行員はお金を動かすのが仕事です。
モノの価値はわからないケースが多いでしょう。
そこで、数値でしか測りようがないため、在庫回転率で判断するのですが、当然、現金が倉庫にある商品に、しかも大量に化けていては資金繰りも厳しくなりますから安全性が損なわれていたのです。
収益性と安全性のバランスが、これからの経営には求められると言えるかもしれません。
まとめ
収益性と安全性のバランスをとっていくために、自己資本比率を高めていくための経営計画が重要になってきます。
今の時代、大幅な売上増加による収益増という経営目標は現実的でないことが多いと思いますが、自己資本比率を高めていくためには、利益を出す以外にも
- 資産の圧縮
- 負債の圧縮
ことによって達成できますが、まずは財務分析で御社の経営実態を把握することではじめて経営計画の作りこみが可能になります。
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