休眠会社の滞納税金
資金繰りの厳しい会社が税金や社会保険料を滞納するという事は良くある事実です。今回は資産が無く支払う事の出来ない税金(国税)がその後、どの様になっていくかお話しします。
資金繰りの厳しい会社(以下、A社という)は2つの事業を営んでおり毎期決算を迎える度に消費税を滞納しておりました。年月を重ねるうちに税務署の対応も厳しさをましてこのままでは事業を存続させれないと考えた社長は2つの事業を別々の第3者に売却して1つの事業を買い取って頂いた会社で働く事を決意しました。
事業売却代金で法人の整理(自己破産)する事も出来ましたが社長自身の考え方や諸事情もあり、会社を整理するのではなく関わって頂いた業者さまへの未払処理に充てて、A社自体は休眠状態にする事にしました。
その後、税務署へ事の経緯を説明に行きましたが、当然税務署側は納得するはずはありません。然るべき手続きを取らせて頂きますとの事で、取引先への債権調査書での照会等淡々と処理が実行されていきましたが売掛金や現預金等の資産も当然に無い為、差押までは行ってきませんでした。
一連の処理が終了して、3ヶ月〜6ヶ月程度たったある日、税務署より一通の通知が届いたのです。
そこには『滞納処分の停止通知書』という題名で滞納処分の執行を停止します。という文章が書かれてあり、更に納税義務消滅見込年月日の記載まであったのです。年月日は通知書発行日から3年後になっていました。
停止事由は『国税徴収法第153条第1項1号』です
国税徴収法第153条第1項1号とは(以下、条文抜粋)
(滞納処分の停止の要件等)第153条
税務署長は、滞納者につき次の各号の一に該当する事実があると認めるときは、滞納処分の執行を停止することができる。
1.滞納処分を執行することができる財産がないとき。
2.滞納処分を執行することによつてその生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき。
3.その所在及び滞納処分を執行することができる財産がともに不明であるとき。
2税務署長は、前項の規定により滞納処分の執行を停止したときは、その旨を滞納者に通知しなければならない
3税務署長は、第1項第2号の規定により滞納処分の執行を停止した場合において、その停止に係る国税について差し押えた財産があるときは、その差押を解除しなければならない。
4第1項の規定により滞納処分の執行を停止した国税を納付する義務は、その執行の停止が3年間継続したときは、消滅する。
5第1項第1号の規定により滞納処分の執行を停止した場合において、その国税が限定承認に係るものであるとき、その他その国税を徴収することができないことが明らかであるときは、税務署長は、前項の規定にかかわらず、その国税を納付する義務を直ちに消滅させることができる。
(滞納処分の停止の取消)第154条
税務署長は、前条第1項各号の規定により滞納処分の執行を停止した後3年以内に、その停止に係る滞納者につき同項各号に該当する事実がないと認めるときは、その執行の停止を取り消さなければならない。
2税務署長は、前項の規定により滞納処分の執行の停止を取り消したときは、その旨を滞納者に通知しなければならない。
現在、A社は納税義務が消滅するのを静かに待っている状態です。
いかがでしたでしょうか?納税は日本国憲法の3大義務の一つであり、国民であれば当然に果たさなければならない義務です。
しかしながら万が一、払えない時はどの様になってしまうのか?不安にさいなまれて命まで絶ってしまう経営者の方もいらっしゃいます。人が不安になる一因としてその先がどの様になるのか分からないから不安になるものです。知識として知っていればその先の対策も考える事が出来、不安もなくなります。
執筆:奥田雄二