「収益とコスト」そして「収入と支出」の違いとは
中小企業の貸借対照表は、多かれ少なかれ数字が操作されていることが多く、とりわけ売掛金(建設業なら「未収金」)に不良性があったり、月商と比較しても「おかしい」とすぐわかる棚卸資産の水増し、などは、銀行は実態バランスシートに敷き直して、あなたの会社の経営実態を掴もうとします。
貸付金や仮払金などもそうですが、もうひとつ、会社の実態が手に取るようにわかるものが「お金の出入り」である資金繰りです。
「収益とコスト」の【損益】は操作できます。
実際にキャッシュが入ろうが出まいが計上できますから、上記で挙げた売掛金しかり棚卸資産などは、いじろうと思えばいくらでも「調節」可能ですが、「収入と支出」の【資金繰り】をごまかすことはできません。
ここで改めて問いかけをさせてください。
「収益とコスト」の損益と「収入と支出」の資金繰りの違いとは何でしょうか?
あなたの会社が、全て現金取引で完結しているなら損益と資金繰りは一致しますが、売掛金・掛買金・未収金・未払金という商習慣が一般的です。
儲けがでていようが資金ショートしたらアウト。一方で、赤字でも資金ショートしなければセーフ。これが資金繰りであり、このように「収入と支出」を管理するものが資金繰り表です。
ここで、再び、先々週そして先週のメルマガで取り上げた、バランスシート(貸借対照表)から「経営実態」の話に戻ります。
貸借対照表は、上部が「流動資産」下部が「固定資産」となっており、資産を上部の項目へ変更することが資金の流れを潤滑にさせます。
キャッシュフローを高める、ということですが、バランスシートの一番上が現金・預金(現預金)ですよね。
これが、あなたの会社の【資金】です。
土地・建物や設備といった「固定資産」はもちろん、売掛金や受取手形といった「流動資産」ですら、現預金が振り替わったもので、これらは全て【資金が減る】ことを意味します。
こうしてみると、バランスシートからは、
1. (死蔵されている)棚卸資産を売掛金に変えられないか?
2. 仮払金や貸付金を回収して現預金に変えられないか?
3. 不要な資産を売却できないか?
といったような本質的な経営課題が明らかになってきます。経営改善に向けて「流動資産」を増やす。
できれば売掛金ではなく【資金】である現預金に変えるにはどうしたらよいのか?そのために何が必要なのか?が存続のために必要な経営計画となるのです。
さらにいえば、バランスシートの右側にある「負債」も【資金】を増やすためのツールになります。銀行からの借入はもちろん、買掛金・支払手形が増えれば、(一時的であろうが)【資金】は増えます。
結局「会社を守る≒資金繰りを回す」ことに落ち着くといえるのでないでしょうか。
会社存続=資金繰りを回しショートさせない
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資金の動きは入金か出金の2つのみしかない
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改善するには入金を増やすか、出金を減らすかしかない
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そのためにどうするか
私は面談員として多くの中小企業における経理の実態を拝見しておりますが、毎月の「お金の出入り」を管理されていない企業は少なくありません。毎月管理していないと、そもそも資金繰り表を用意することはできません。
面談の後にお客様から「問題点がクリアになった」という趣旨のお言葉をよくいただくのですが、毎月の「お金の出入り」が見えないがゆえ「問題点が見えず悩んでいる」という経営者の方々に見られる共通点でもあります。
したがいまして、銀行から言われて慌てて資金繰り表を作らなきゃ!大変だ!となっていないか、今一度振返ってくださればと思います。