銀行は総額いくらまで融資を出すのか
銀行は総額、いくらまで融資を出すのですか?
この質問は、経営者の方からよくいただく質問の一つです。総額と言っても、次の2つの意味があります。
- 一企業が、全ての銀行から合計で、いくらまでの融資を受けることができるか。つまり、一企業の貸借対照表において、負債の部の借入金を、いくらまで増やせるか、ということです。
- 一つの銀行が、一企業に、総額いくらまでの融資を出すことができるか。つまり、銀行は一企業に対し、どこまで融資を出してリスクをとることができるか、ということです。
この2つの意味で、具体的に見てみます。
一企業が、全ての銀行から合計で、総額いくらまでの融資を受けることができるか。
銀行は、その企業の借入金が、どれぐらいの水準かを、どう見ているでしょうか。銀行は、月商と比較して、一企業の借入金規模を見ています。
例えば、年商600百万円→月商50百万円、借入金合計150百万円の企業であれば、
借入金150百万円÷月商50百万円=3か月
ということで、月商の3か月分の借入金がある企業、という見方をします。
例えば、
A社 年商60百万円 借入金90百万円 借入金は月商の18か月
B社 年商600百万円 借入金200百万円 借入金は月商の4か月
この2社を比較すれば、借入金の金額はB社の方が大きいものの、月商と比較するとA社の方が圧倒的に借入金が多い水準にある、という見方をします。
不動産賃貸業など借入金が月商に比べてどうしても多くなってしまう業種を除き、銀行は、企業の借入金水準について、次の見方をします。
借入金は月商の0~4か月 → 借入金は少ない水準
借入金は月商の4~8か月 → 借入金は普通の水準
借入金は月商の8か月~ → 借入金は多い水準
このように見て、借入金が多い水準になると、銀行はその企業を警戒するようになります。
借入金が多くなっても、その理由が会社の売上が成長しているからで、それにともなって運転資金や設備資金が多く必要だから、という理由であればまだよいです。
一方、売上高が変わらないのに、借入金が多くなっているのであれば、企業の損益が赤字だからそれを埋めているのでは、という考え方を、銀行は第一に行います。
なお、実際の損益計算書が黒字で、売上も増えていないのに、借入金が多く膨らんでいる場合、もしかして粉飾決算をしているのでは、という見方さえ銀行はします。
なぜなら、損益計算書が赤字であるのを利益操作で黒字にはしても、借入金までは隠せないからです。このように銀行は、借入金総額が月商の8か月以上になると、借入金規模が大きいという見方をして、警戒してきて、融資は受けにくくなってくるものです。
一つの銀行が、一企業に総額いくらまでの融資を出すことができるか
一つのかごに全ての卵は盛るな、とよく言われるように、銀行は一企業に、多く融資しすぎないようにするものです。企業の財務状態を見て、銀行は、その企業に対し、一定金額以上は融資を行わないようにします。
ただ、銀行は「枠」という考え方を行いません。
例えば、A銀行はB社に対し、現在の融資総額が80百万円だとしても、その時に「B社に対しては150百万円までは融資をしてもよい」というような決め方はしていません。融資が申し込まれて銀行内で稟議書がまわる都度、ここまで融資を出してよいものか、審査されます。
例えば、B社の融資総額が80百万円で、50百万円の新規融資が申し込まれて、A銀行は「80+50=130百万円となるが、100百万円までにしておこう。だから50百万円も融資は出さず、20百万円でなら融資は出すとしよう。」と考え、この場合は当初申込み額から減額され、20百万円で融資審査が通ることになります。
ここから考えると、企業が借入金を増やしていくためには、一つの銀行だけでは限界がくるため、複数の銀行から融資を受けられるようにしていく必要があることになります。
例えば年商600百万円の企業で、250百万円まで借入金を増やしていきたいのであれば、一つの銀行で250百万円を増やすのは困難で、多くの銀行から融資を受けていく必要がある、ということです。
このように、一つの銀行が一企業にいくらまでの融資を出すのか、企業の財務状況や、担保などの状況などによって、一概には言えませんが、一つの銀行は一企業に、一定以上は融資を出さないようにするのが普通であり、企業が借入金を増やしていきたいのであれば、融資を受ける銀行を増やしていく必要があります。
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