赤字でも銀行が融資を出すとき
決算書の、損益計算書の利益が赤字でも、銀行が融資を出すときがあります。利益が赤字であることで絶対に銀行は融資を出さない、というわけではありません。
しかし自社が赤字であれば、銀行に融資を出す気を起こしてもらうには、一工夫が必要となります。まず、利益が赤字でも、融資を出すケースを考えてみます。
考えられるケースは、次のとおりです。
- 赤字であっても、当期純利益が赤字であったのであり、営業利益・経常利益が黒字であるケース。
- 赤字であったのは、その期のみの特殊要因によるものであり、次の決算では黒字が確実であるケース。
では、この2つのケースを詳しく見てみます。
目次
1.赤字であっても、当期純利益が赤字であったのであり、営業利益・経常利益が黒字であるケース
損益計算書にある利益の種類は、売上高から下に見ていくと、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益、があります。売上総利益が赤字であれば、売れば売るほど赤字ということであり、企業としては存続できません。
営業利益が赤字であれば、本業で赤字ということであり、早急な経営改善が必要となります。
経常利益は、営業利益に営業外利益を足し、営業外費用を引いたものであり、営業外費用の代表的なものは支払利息です。利息などの営業外費用を引いて赤字ということは、恒常的に赤字である体質ということになります。恒常的に黒字となるよう、経営改善を行っていく必要があります。
つまり、営業利益・経常利益がどちらも黒字でなければ、この企業は常に赤字となる体質であると銀行は見てしまいます。融資を行った後の返済の原資は、企業が事業で稼ぐ利益により生み出される現金です。営業利益・経常利益が赤字であるということは、返済の原資がない企業、ということになります。
そういう企業に対し、銀行は「では、どうやって返すの?」という見方をします。こういう見方をされると、融資が出るのが困難です。一方、営業利益・経常利益、ともに黒字であるが、当期純利益が赤字である。これは、どういったケースでしょうか。
経常利益に、特別利益が足され、特別損失が引かれ、また税金が引かれると当期純利益となります。
営業利益・経常利益が黒字でも、当期純利益が赤字であるのは、特別損失が大きかった場合です。
特別損失とは、その期、特有の損失のことであり、不動産売却での売却損、退職金などがあります。
この場合、営業利益・経常利益が黒字でも、特別損失、つまりその期、特有の損失により当期純利益が赤字となってしまった、という見方を、銀行はします。それであれば、次の期はその特別損失がなくなるため、黒字になるだろう、と銀行は考えます。そうなると、銀行は融資を出しやすくなります。
このように、利益が赤字でも、当期純利益が赤字であったのであり、営業利益・経常利益が黒字であれば、銀行は融資を出しやすくなります。
2.赤字であったのは、その期のみの特殊要因によるものであり、次の決算では黒字が確実であるケース
災害や、風評などにより、企業の業績に大きく影響が出る場合があります。
例えば、東日本大震災ではあらゆる業界の企業に大きな影響が出ましたが、その中で特に旅行業界に大きな影響が出て、売上が大きく下がりました。
例えば、ある病原菌が特定の食材に存在するということで、その食材を主に使用する飲食店の来客数が大きく減少することがあり、売上が大きく下がることがあります。
このように、災害や風評などにより、企業の業績が一時的に悪化することがあります。しかししだいにそれが収まり、黒字に回復していくのであれば、赤字となったのは、その期のみの特殊要因によるものということになります。
このような特殊要因により赤字となったが、それが収まることにより次の決算では黒字確実であると銀行が見ることによって、銀行は融資を出しやすくなります。
しかし、その企業は次の決算で黒字になるだろう、と銀行は勝手に見てくれるわけではありません。企業側から、次の決算では黒字確実であることを、銀行にアピールしていくことが大事です。
アピールする資料には、次のものがあります。
経営計画書
今後3~5年の、損益計画を含めた経営計画書です。そこで、次の決算で黒字になることを、数字で示すとともに、その根拠も示します。
直近の試算表
前回の決算では赤字であっても、今期の、直近月までの試算表で黒字になっていれば、今期は黒字で推移していることを、銀行は確認することができます。
またこれらの資料とともに、なぜ前期は赤字となったのか、その理由を、文書にして銀行に提出します。このようにして、前期は特殊要因により赤字となったが、それが収まることにより次の決算では黒字確実であると銀行にアピールすることにより、銀行は融資を出しやすくなるのです。
銀行が融資を出すか出さないか、早いうちに見極めを
以上、企業が赤字であっても、銀行が融資を出すケースを見てみましたが、赤字企業には、やはり銀行は融資を出しにくいものです。
赤字企業であれば、すぐにでも取引銀行それぞれの、自社への融資スタンスを探り、融資が困難であれば、現在の融資返済を減額や猶予するリスケジュール交渉を検討すべきです。
その見極めのタイミングが遅れると、資金繰り破綻に早く向かってしまうことになります。赤字企業であれば特に、銀行のスタンスを常に見ておくよう、心がけてください。
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