信用格付を攻略する
銀行が、融資先企業に付ける、信用格付。債務者区分と信用格付との違いは次のとおりです。
債務者区分は、金融庁の金融検査マニュアルをもとに、銀行が自己査定という作業で融資先企業に付けるもので、以下の区分となります。
- 正常先
- 要注意先(この中でさらに一般の要注意先と要管理先に分けられる)
- 破綻懸念先
- 実質破綻先
- 破綻先
信用格付は、この債務者区分と連動して、銀行独自でさらに細かく分けられるもので、以下のように、銀行ごとにルールを決めています。
- 1格~6格(正常先)
- 7格~8格(一般の要注意先)
- 9格(要管理先)
- 10格(破綻懸念先)
- 11格(実質破綻先)
- 12格(破綻先)
では、この信用格付は、どのように決められるのか。信用格付は、定量分析と定性分析で決められます。
定量分析とは、決算書の数値を分析し、それを点数化されて付けられるものです。
定性分析とは、経営者の能力といった、数値では測れないものを、評価し点数化して、行う分析です。
定量分析
以下、定量分析による信用格付の例です。
企業の安全性の分析で、当座比率、流動比率、自己資本比率、固定比率、固定長期適合率。
企業の収益性の分析で、売上高経常利益率、総資本経常利益率。
企業の返済能力の分析で、債務償還年数、インタレスト・カバレッジ・レシオ、経常収支比率。
これらの指標が使われます。以下、それぞれの指標の、計算式です。
- 当座比率:当座資産÷流動負債(当座資産=現金預金+受取手形+売掛金+(流動資産の部にある)有価証券)
- 流動比率 :流動資産÷流動負債
- 固定比率 :固定資産÷純資産
- 固定長期適合率:固定資産÷(固定負債+純資産)
- 自己資本比率 :純資産÷総資産
- 売上高経常利益率:経常利益÷売上高
- 総資産経常利益率:経常利益÷総資産
- 債務償還年数:有利子負債÷(営業利益+減価償却費)
- インタレスト・カバレッジ・レシオ:(営業利益+受取利息配当金)÷支払利息割引料
- 経常収支比率:経常収入÷経常支出
定性分析
定性分析では、以下のような項目が、点数化されます。
- 経営者:経営能力・社会的評判・健康状態・後継者・代替者
- 資産 :会社資産の含み・代表者(保証人となる場合)の資産状況
- 技術力:技術力・開発力・研究開発体制、特許権・実用新案権等知的財産権
- 販売力:マーケティング力・流通ルート・商品・差別化
- 業界 :市場の将来性
実際の信用格付の計算のされ方
以下のように、定量分析、定性分析が計算されて、その合計値により、信用格付が付けられます。
定量分析
当座比率 27.03% 5点満点中0点
流動比率 571.94% 5点満点中5点
自己資本比率 23.53% 10点満点中7点
固定比率 203.08% 5点満点中3点
固定長期適合率 52.57% 5点満点中4点
売上高経常利益率 0.19% 10点満点中1点
総資本経常利益率 1.41% 10点満点中0点
経常収支比率 97.41% 10点満点中3点
債務償還年数 -12.07年 10点満点中0点
インタレスト・カバレッジ・レシオ -5.32倍 10点満点中0点
定量分析 合計 80点満点中23点
定性分析
経営者:4点満点中2点
資産:4点満点中3点
技術力:4点満点中3点
販売力:4点満点中1点
業界:4点満点中1点
定性分析 合計 20点満点中10点
総合計 100点満点中33点
正常先の点数による格付
100点~81点1格 80点~66点2格 65点~51点3格
50点~36点4格 35点~20点5格 19点~0点6格
当社は正常先で1格~6格、点数表により5格
信用格付の企業への影響
このようにして決まった信用格付により、融資の審査や、融資金利の基準に影響が出ます。
信用格付は、まず債務者区分を元にしますので、企業は良い債務者区分を目指さなければなりませんし、正常先となったら、その中でも良い信用格付となるよう、決算書の内容を良くしていかなければなりません。
上記に例として挙げた、信用格付の評価基準は、銀行ごとに独自で決められています。しかし、多くの銀行は、だいたい上記のような評価基準となっています。上記の基準をもとに、自社の信用格付をどうやって良くしていくか、考えていってください。
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