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大企業にできないこと

私 :「新聞紙上では、大企業はこれから業績が良くなるという意見が多いようです。」

 

社長:「中小企業は、そのようなことは後だな。まだまだ市場は厳しい。」

 

私 :「そうは言っても、当社も業績を上向きにしなければなりません。違いは何でしょうか。」

 

社長:「業績改善は当然だ。我々と大企業との大きな違いは、社員教育に尽きる。」

 

私 :「そうですね。」

 

社長:「時間も金も使いたいが、現実にはなかなかそこまでできない。だから差がつく。」

 

組織の構築や運営においては、上位から「使命(Mission)」・「価値観(Values)」・「ありたい姿(Vision)」・「戦略(Strategy)」・「行動計画(Plan)」が必須である。しかし、業績が悪くなればなるほど、戦略や具体的な行動計画に目がいきがちになり、その改革に着手することが多くなる。しかし、そこばかりに目がいってしまうと、実は改善は遅くなる。

 

ここで、論語に出てくる一節を紹介する。

 

「君子は先ず徳を慎む。徳あればここに人あり、人あればここに土あり、土あればここに財あり、財あればここに用あり。徳とは本なり、財とは末なり。」

である。意訳すれば、「徳望高き人の周りには、いつの間にか人が集まって来る。人が集まれば生活の場が出来る。そして、そこに仕事が発生し、結果として富が生まれる」という意味である。

 

何が言いたいかと言うと、社員教育も目先のことばかりに気を取られないことが大切だということである。営業手法や製造手法は、何のために習得しようとしているのか。そのことに社員一人ひとりが自分の言葉で気づいた時、その会社は素晴らしい人たちの集まりである。この気づきこそが、真の社員教育ではないかと私は思う。

 

この気づきは、毎日毎日言い続けて、ある時にふと気付くものでもある。だから、集合研修を1年に数回したから教育をしたというものも間違いであるし、時間においても毎日の朝礼の5分で気づきを与える言葉を社長が投げかければ、効果は十分に見込めるのである。

 

お金や時間は、十分手にした時に一度に使うのではなく、少しずつ使える時に使えば良いのである。大企業にはできない社員教育とは、社員一人ひとりに直接、社長の気持ちを言葉で届けられる環境である。その環境を有効に活用すれば、よいのである。

この記事の著者

  • 野上 智之

    公立大学法人北九州市立大学卒業、大手システム会社を経て、教育研修会社での新規部門立上げや西日本責任者としての実践により、収支損益の黒字化と人財育成がなければ、企業は元気にならないという強い信念のもと中小企業に特化した経営コンサルタントに転身。現在も10社を担当し各地でセミナーや研修を実施したり、地域金融機関との連携を実施。行政書士試験合格、宅地建物取引士、動産評価アドバイザー(TAA)、中小企業庁ミラサポ専門派遣登録専門家、プッシュ型事業承継支援高度化事業登録専門家(中小企業庁)、再生支援ネットワーク会議メンバー(広島)

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