値引きの落とし穴
私 :「社長、ここ数ヵ月の売上高を確認すると、値引きが多いように思いますが。」
社長:「そうだろう。今は少し値を下げてでも、売上を確保しなければならない。」
私 :「社長の指示だったのですね。」
社長:「そうだ、5%ダウンは仕方がないと思っている。」
私 :「そうですか。それで利益は、値引き前より上がりましたか。」
社長:「売上は少し上がっていると、聞いているが・・・。」
上記の会話を、以下の数字の例で検証するので、みなさまも、確認していただきたい。
1.当初のモデル
売上高 400,000千円
変動費 152,000千円(変動比率38.0%)
限界利益 248,000千円(限界利益率62.0%)
固定費 230,000千円
経常利益 18,000千円(経常利益率4.5%)
ここで、売上高を5%値引いても、同様の経常利益を確保するためには、一体いくらの売上高が必要かを考えていく。では、売上高が5%値引かれるということは、変動費以下の数字はどのように変化するだろうか。
2.売上高を5%値引いたモデル
考え方としては、値引き前は、売上100に対し38%の変動費がかかっていたのが、5%の値引き後は、売上は下がるが仕入は変わらないので、売上95に対し「売上100に対する38%の変動費」がかかることになる。ここがポイントである。
売上高は400,000千円×95%=380,000千円になり、変動費の額は変わらないから152,000千円。
よって限界利益は、380,000-152,000=228,000千円。限界利益率は、228,000千円÷380,000千円×100=60.0%となる。販売数量がこのままだと、固定費は一定なので・・・
売上高 380,000千円
変動費 152,000千円(変動比率40.0%)
限界利益 228,000千円(限界利益率60.0%)
固定費 230,000千円
経常利益 △2,000千円(経常利益率△0.5%) 赤字になる。
3.値引き効果モデル
今回は、売上を5%値引いても、同様の経常利益を確保できる売上高を求めたいので、
売上高=(固定費+目標利益)÷限界利益率の算式を用いて、
売上高=(230,000千円+18,000千円)÷60.0%=413,333千円。
これが、答えとなる。
売上高 413,333千円
変動費 165,333千円(変動比率40.0%)
限界利益 248,000千円(限界利益率60.0%)
固定費 230,000千円
経常利益 18,000千円(経常利益率4.4%)
また、当初モデルの売上を5%値引いた場合、413,333千円÷380,000千円×100=108.8%となり、販売数量を8.8%多くしなければならないことも重要である。
よって、この販売数を確保する戦略があって初めて、値引きの効果が有効と言える。