スティーブ・ジョブズ氏が語る「顧客満足」顧客満足から顧客感動へ
2011年10月5日、アップル社の立役者として名高いスティーブ・ジョブズ氏が死去しました。
デザインや操作性への評価が高いパソコン、Macintoshは元々有名でしたが、近年ではiPhoneやiPadが大ヒットしたことで、日本でも著名な経営者となりました。
日本通で和食好き、仏教徒とも言われるジョブズ。強烈な個性は トラブルメーカーであると同時に稀代のプレゼンターとして数々の名言を残しています。既にその伝記的な書籍もありますし、今後も折に触れて、その名や言葉は私たちの目にとまることになるでしょう。
そんな中、一つの言葉を挙げてみたいと思います。
「消費者に、何が欲しいかを聞いてそれを与えるだけではいけない。製品をデザインするのはとても難しい。多くの場合、人は形にして見せてもらうまで自分は何が欲しいのか わからないものだ」(スティーブ・ジョブズ)
かなり有名な言葉ですので、聞いたことのある方は多いでしょう。
一方で、ジョブズの言葉ではありませんが、このような言葉も存在します。
「顧客の声を聞き、それに応えることが一番大事」
ジョブズの言葉からは少し矛盾のある言葉にも見えますが、まとめ直せば「顧客からのニーズを理解するのは第一歩としては大事だが、それだけでは足りない。ニーズを理解した上で、顧客が自覚できていない潜在的なニーズ(喜び)を提供しなければならない」といったところでしょうか。
この解釈は、経営に関する言葉としてよく使われる、「顧客満足」という単語からも説明ができます。今回は、この点についてお伝えしようと思います。
「顧客満足」の間違い
今日、デフレ経済と言われる世の中においては
需要<供給
ですから、商品をどんなにつくっても、それが売れるかどうかは別の問題です。そこで企業は、顧客満足度を引き上げることで自分達の会社の商品が指名されるようにしよう、と考え
- 顧客のデータベースをつくり、アンケートをとって、より顧客を知る
- そのデータベースを利用することで、顧客とのコンタクト機会を増やし成約率を上げる
- コンタクト履歴を累積していくことで、顧客のニーズを理解し満足度を向上させ、リピート率を上げる
…という流れで、顧客満足の向上に取り組んでいます。しかし、ジョブズの言う通り、これだけでは足りません。なぜなら、お客様には自ら自覚している顕在ニーズがありますが、その奥には、顕在ニーズが生まれる原因になっている「潜在ニーズ」が存在するから、です。
例えば、宝石を買いに来たお客様へお勧め商品を紹介することは普通に行われますが、では、お客様は、なぜ宝石を必要になったのでしょうか。
これまで使っていたものが壊れた場合は、単純に代わりのものが欲しいということかもしれませんが、本当にそれだけかは、お客様自身も気づいていません。その宝石には、今の自分を表現したいという想いが込められているかもしれないのです。
また、その宝石が誰かへの感謝を込めたプレゼントであれば、背景には「感謝する気持ち」があるはず。つまり、そこには何らかの”感情”が存在しているのです。顕在ニーズは、多くの場合は具体的な商品やサービスがついて回るため、顧客は言葉にしやすいもの。一方、潜在ニーズは、逆に個人的な感情・想い・願いのため、わざわざ伝えて頂けるわけではありません。
どうしても、顧客満足という「言葉」にとらわれてしまうと、顧客から直接言われたことにそのまま反応しがちになり結果的に、”御用聞き”で終わってしまうのです。
「顧客満足」から「顧客感動」へ
顧客満足だけでは足りない、もう一歩先へ進むための概念、それを言語化するならば「顧客感動」という表現になるでしょうか。「満足」を、文字通り満たすこととするならば、「感動」は、それを超えてあふれさせるつまり、顕在ニーズを満たし、潜在ニーズにまで踏み込むことで顧客に「感動」して頂く、ということです。
ジョブズ氏の場合は、PCの機能と携帯電話を融合することで情報端末を小型化、単一化しただけでなく、その操作をたった一つのボタンと画面へのタッチで表現することで情報通信をより簡単に、身近にして、より多くの人と繋がる、便利で楽しい生活を送りたいという潜在ニーズに応えていた、ともいえます。
今では、中小企業であっても顧客データベースを管理する会社が増えていますが、顧客の「潜在ニーズの把握」にまで踏み込めるのはまだわずか。だからこそ、チャンス、ともいえます
ここに気づかれた会社は、デフレや少子化というマーケット縮小の外部要因があろうとも、競合他社に抜きん出て、売上を伸ばす可能性があります。(そう、ジョブズのアップル社のように。)興味をもたれる方は、顧客「満足」を基盤に、顧客「感動」してもらうことを意識した、顧客情報の管理・運用を考えてみてはいかがでしょうか
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