給料泥棒の社員は気にしなくてよい
パレートの法則を、経営者の立場に置き換えてみる
パレートの法則、というのをご存知でしょうか。「全体の数値の大部分は、その一部の要素が生んでいる。」という法則(経験則)で、よく使われるのは2:8、もしくは2:6:2の比率での議論です。
有名なものは、
- 売上の8割は、2割の商品(サービス)が生んでいる。
- 組織の人材は、優秀な人が2割、無害な人が6割、給料泥棒が2割
といったあたりでしょうか。前者はABC分析でもよく見られる、有名なものです。商品アイテムの絞り込みや、顧客別分析を行う際に頻繁に使用されるため、実務上で活かされている方も多いことでしょう。
今回取り上げたいのは後者の方。これは会社組織や集団を、経営者としてどのように考えるのかの基盤になります。この法則には、やっかいなことに、「給料泥棒」の2割を取り除いても、残りの中から新たに、また全体の2割が給料泥棒になってしまうという法則が付いています。
では、何をしても無駄ではないかと、思われがちですが、経営において、社長の精神的な負担を減らすことができる場合はあります。
2割の「優秀な方」へは
優秀な方というのは、社長の意向を理解し、会社にとって有益な存在です。よく、「人財」と表現されます。このような方へは、最低限必要なもの以上は束縛しないで、自由に能力を発揮して預けるように配慮すれば、あとはお任せしましょう。つまり、ルール付けを一旦お願いすれば、それ以上は社長が気に病む相手ではありません。
2割の「給料泥棒な方」へは
順序が前後しますが、こちらから説明します。社長にとって最も悩ましいゾーンの方々になりますが、気にし過ぎてはいけません。なぜなら、撲滅しても新たにまた誕生してしまからです。よって、考え方として、「最大限会社にとって邪魔にならない仕組みにしておく」ということになります。
一方、もし頑張って会社に貢献してくれるようになったならば、すぐに評価できるように、いつでも復活できる道を用意しなくてはなりません。そうすれば、必要なことは、当然、「変動費化」に他なりません。
6割の「無害な方」へは
この法則を会社にあてはめれば、半分以上の方はこのゾーンになります。当然、最も肝になりますが…、パレードの法則によれば「切り取った一部にも、この法則は適用される」ので、この6割の内の2割、つまり全体の12%は、「優秀な方になれる可能性をもつ」ことを考えなければなりません。ここがポイントです。
この法則はどの会社でも似たような機能を持ちます。本来、社長が特に気を配って対処を考えるべきことは、放っておいても問題のない「優秀な方」でも、どうしても気になる「給料泥棒」でもなく、「無害の方」の一部、全体の12%だけということです。
もし、この約1割が、優秀な方に近い機能をすれば、自動的に他の会社より1割は高い戦力を持てる、ということになります。
全員同じ気持ちでというのは現実には無理
つまり、社員全員に同じ思想と能力を持たせることは、理想目標として目指すとしても、社長の日常にまでそれを持ち込むと、ギャップに苦しむことになる、ということです。
何かを100人に伝えたい時、100人全員に等しく納得してもらうことを考えるより、20人に分かってもらい、20人は分かってくれないので、報いる必要がなく、残りの60人の中から、12人が新たに分かってくれれば素晴らしいと思いましょう。気分が楽になりますし、結果的に重点的に取り組む相手を約1割に絞り込むことができます。(「優秀な方」にはそれを委託することもできます)
最後に、「給料泥棒」の補足をします。この中でも2割は、より上のゾーンに上がるかもしれません。2割の2割ですから、わずかに4%ではありますが、この25人に一人というものを見出し、採り上げることができれば会社は大きく飛躍することができます。何しろ、会社の荷物と思っていたものが、そうでなくなるのですから。
今回はこのパレートの法則を、会社組織において適用することを試みましたが、この考え方は他のどこにでも適用できます。ご参考にしてみてください。