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役員報酬の意味

一時的であったとしても、赤字化してしまった中小企業に対しては、銀行は冷たくなるものです。一気に融資姿勢が厳しくなってしまうことを怖れる経営者は、「すでに削れるような経費は削っている」と言います。

 

企業は、これ以上の経費削減は不可能と思われるところまで削減し、別の部分で無理が出てきている場合があります。

 

今回は、「銀行の指導によるコストはどこまで削減するべきなのか」について、特に企業側が無理をしがちな部分、それはやらなくともよい部分について、お話します。

文字通り、「身を削る」のは、意味が無く、やる必要はない

決算書の勘定科目明細には、役員の役員報酬が記載されているページがあります。ここは銀行も丁寧にチェックをするもので、「社長、今の経営状態からすれば、この金額はもらい過ぎでは…?」とリスケジュール等依頼した際に言われてしまう経営者はたくさんいます。

 

経営者側としては、頼みごとをしている、またそれ以前に債務者であるという立場上、断りにくいものです。しかし、その結果、

 

経営者個人での借入返済等ができなくなる
⇒個人での借入(当然金利は高い)で、借りたお金で返済することになる
⇒金利負担が増え、会社と経営者個人合算での収支がより悪化する

 

という状況になってしまっている方は、昔から減っていません。銀行は、中小企業に対して、経営者個人と会社を合算で考えますが、上記のような状況までは考慮しません。“とりあえず要求して、言う事を聞いてくれればそれでよし”というのが銀行員の本音です。※というより、意識的にこれを気付いてすらいないこともあります。

 

経営者の中には、「家族の入院費用が必要だが、自分の役員報酬を削ったために支払できなくなる」という重大な状況すら存在しています。

生活に必要な金額は、受け取らなければ逆に悪化してしまう

重要なことは、「そのコストが適正なのかどうか」を判断することであり、言われた通りに何でも削減することではありません。

 

人によって、必要な生活資金、特にお子様の養育資金や養老に関わる資金まで手を出してはいけません。場合によっては確かに削減するべきものもありますが、そのような際には、月次での個人の収支を銀行に提出し、理解を求めるべきです。

 

「光熱費」
「家賃(住宅ローン)」
「食費」
「その他生活費」
「教育資金」
「個人借入の返済」
「(対象がある場合)養老資金」
「その他出費」

 

くらいの区分で構いませんので、それぞれ●●万円と記入し、その合計から「いくらくらいは必要」と言いましょう。結局、足りなくなってしまうと上記のように個人借入になるか、会社からの貸付や仮払いとなり、苦しい状況になるだけです。

 

少しくらいは遊興費も必要です。人間が一切の遊びなく、集中して活動できる時間は限られています。それを超えれば冷静な判断力を喪失します。経営者はどんな苦しい状態でも正しい決断をしなければなりません。そのために必要な資金は胸を張って受け取るべきです。

一人になれる自動車は、確保しておいてよい

経営者にとって最も大事なものは「判断・決断・実行」することです。それが曇ってしまうような事態は避けるべきですが、自宅では家族、職場では社員、と何かとプレッシャーにさらされる経営者にとっては、一人になれる場所と時間が必要です。

 

限りある時間の中で最もそれが確保されるのは…、自動車の中、です。特に大都市市街地以外では社長は自動車をお持ちであることが大半ですが、自分専用の車両を無理してまで売却し、資金化することはお勧めしません。

 

当然、何台でも持って頂いてよいとは申し上げられませんが、ご自分一人で情報を整理し、振り返り、考え、次に何を為すか考える場所は必要です。自動車に限らなくてもいいのですが、ご自分がご自分でいられる環境を確保されるとよいでしょう。

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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