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銀行はなぜ他の銀行の融資残高を聞いてくるのか

銀行から、他の銀行での融資残高を聞かれることは多いと思います。それを聞かれて、あなたは、「なぜ他の銀行の融資残高を教えなければならないんだろう?」と思うことは多いのではないでしょうか。

 

なぜ、銀行は、他の銀行の融資残高を聞くのか、その背景をお話します。

融資残高推移を聞くペースは3ヶ月ごと

私が勤めていた銀行では、3ヶ月ごとに、融資先企業から、各銀行のそれぞれの融資残高を聞く、ということが決められていました。そして、それを「融資残高推移表」という紙に記録していました。

 

また、融資シェア、つまりその企業が借りている融資総額において、その銀行が何%を占めている、という数値を出していました。以下が、銀行で作られている融資残高推移表の例です。Mとはミリオンの略で、百万円、という意味です。例えば84Mは、84百万円になります。

 

    22年10月  23年1月  23年4月   23年7月

A銀行 84M 58%  78M 48%  67M 44%  58M 41%

B銀行 48M 30%  54M 34%  44M 31%  53M 38%

C信金 26M 12%  29M 18%  32M 25%  29M 21%

総額  158M    161M    143M    140M

 

銀行は、なぜこのような表を作っているのか。それは、他の銀行の動きを探るため、です。

銀行は他の銀行の動きをどう考えるか

他の銀行の動きとは何なのかを言うと、他の銀行が、今までと変わらず融資を出しているか、それとも融資を抑制しているか、ということです。上記の表で言うと、メイン銀行(ここでは融資残高が一番多い銀行)はA銀行となります。

 

表を見ると、ここ1年近く、融資を出していない、ということが分かります。

 

一方でB銀行とC信金は、変わらず融資を出しています。この表を見て、B銀行とC信金が何を考えるかというと、「なぜA銀行は、ここ1年、融資をストップしているのか?」ということです。

 

A銀行はメイン銀行であるにも関わらず、融資をストップしている。

 

B銀行・C信金から融資を受けるのであれば、当然、A銀行にも融資を申込んでいるはず。しかしA銀行から融資を受けられていないのであれば、A銀行は、融資を出せない何か理由があるはず。

 

こういう見方を、B銀行とC信金は、します。そして、B銀行とC信金は、A銀行は、B銀行とC信金に融資をどんどん肩代わりしてほしいと考えているのではないか、と考えます。

 

そこで結論は、B銀行・C信金ともに、新たな融資は慎重になろう。A銀行が再び融資を出すのでなければ、自分のところも融資は出さないでおこう。ということになります。

 

こうなると最悪で、A銀行からはもちろん、B銀行、C信金からも融資は受けられないことになり、とたんに資金繰りが厳しくなってきます。

実は融資審査において重要な、融資残高推移

ここで例にあげたB銀行、C信金の見方のように、融資残高推移表は、融資審査において、審査材料の一つとして、重要な役割を果たすことになります。

 

だから、銀行ごとの融資残高推移は、融資を受けている企業にとっては、あなどれないものになります。

 

このようなことで、融資審査に不利にならないように、融資を受けている企業においても、毎月の融資残高を記録していき、それを見て銀行はどのように考えるか、推測してみる習慣を付ける必要があります。

 

銀行が考えることは、

 

  • 融資シェアの極端な変化は起こっていないか。
  • 他の銀行(特にメイン銀行)は、融資を抑制していないか。

 

ということです。融資残高推移を見て、銀行に疑念をもたれないか、常に注意していってください。

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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