製造業が自社の製品を自社自身で売りたい
自社の製品を自社自身で売りたい場合に考えること
製造業の会社からよく相談いただくことの一つに、「自社の製品をインターネットで販売したい。」があります。
例えば、Aという製品を製造しているが、それをインターネットで直接販売すれば、自社に入る利益が大きくなるから、直接販売したい、という相談です。
実際の店舗に比べて、インターネットでの販売はコストがそう大きくはかからないこともあり、インターネットで販売してみたい、と思うのでしょう。ただ考えなければならないのは、その製品を卸している小売店の存在です。
まして、その製品を卸している小売店の多くが、その製品をインターネットで販売しているとすると、そのネットショップが、自社が作ろうとしているネットショップと競合することになります。自社の製品であるに関わらず、自社の製品と競合してしまうのです。このようなケース、よくあるのではないでしょうか。
ではこの場合、どういう選択を行ったらよいのでしょうか。
選択肢としては、次のようなことが考えられるでしょう。
- 自社製品が、卸先の小売店のネットショップで販売されていることが多いため、自社製品を自社のサイトで販売することをやめる。
- 自社製品が、卸先の小売店のネットショップで販売されていることが多いが、自社製品を自社のサイトでも販売する。ただ自社のサイトでは定価で販売し、卸先の小売店の販売のじゃまをしないようにする。
- 自社製品が、卸先の小売店のネットショップで販売されていることが多いが、あえて自社でもインターネットでショップを開き、卸先の小売店に負けない安い価格で製品を販売する。
- 自社製品を小売店に卸すことは一切やめ、自社での販売のみとし、インターネットで製品を販売する。
製造業が、自社製品をインターネットで販売しようとする場合、当然ですが、卸先の小売店との関係に気をつけなければなりません。小売店とすれば、製造元の会社がその製品を販売するのは、おもしろくありません。小売店とすれば、製造元の会社がその製品を販売するのであれば、当然、売上に影響が出てきます。
そう考えると、卸先の小売店との関係を考えて、上記4つの選択肢を考えることになります。
小売店との関係に気をつけたやり方を考える場合。
小売店の販売に支障をきたしてはいけないので、とりうる選択肢としては、
- 自社製品が、卸先の小売店のネットショップで販売されていることが多いため、自社製品を自社のサイトで販売することをやめる。
- 自社製品が、卸先の小売店のネットショップで販売されていることが多いが、自社製品を自社のサイトでも販売する。ただ自社のサイトでは定価で販売し、卸先の小売店の販売のじゃまをしないようにする。
小売店との関係に気をつけたい場合と言えば、小売店がその製品を十分に売ってくれている場合でしょう。小売店が、製造業である自社の製品を売ってくれなくなれば、その製品の売上は大きく落ち込むことになります。それよりも、その製品の販売を続けてくれた方がよいでしょう。
そこで、1か2の選択肢。自社の製品をインターネットで販売しないか、販売しても定価で販売し、小売店の販売のじゃまをしない方法をとることになります。また、自社製品をインターネットで販売しない場合でも、その製品の紹介ページを作り、その製品を世の中に知ってもらう取組は行った方がよいでしょう。
小売店との関係に気をつけなくてもよいやり方を考える場合。
この場合、自社自身で、自社製品の消費者への直接販売を広げていくことを考えます。
とるやり方とすれば、
- 自社製品が、卸先の小売店のネットショップで販売されていることが多いが、あえて自社でもインターネットでショップを開き、卸先の小売店に負けない安い価格で製品を販売する。
- 自社製品を小売店に卸すことは一切やめ、自社での販売のみとし、インターネットで製品を販売する。
となります。
小売店との関係に気をつけなくてもよいと判断されるケースでは、卸先の小売店が自社の製品を十分に販売してくれていない、というところから判断されることが多いでしょう。
その場合、自社の製品を自社自身で多く販売するために、自社でインターネット販売を行い、卸先の小売店に負けない価格を提示して、自社で多く販売できるようにしたり、もしくはいっそのこと、その製品を小売店に卸すことをやめて、自社のみで製品を販売したりします。
また、3.4の選択肢をとる場合、自社の製品を自社自身で販売することに力を入れていくことになりますが、特に考えなければならないことは、自社自身で、インターネットで販売していく力がどれだけあるか、ということです。
自社自身に、販売力はどれだけあるのか。
インターネットで製品を販売するといっても、簡単にできるものではありません。自社製品の販売サイトで多くのアクセスを集めることができるというインターネットでの集客力。またサイトで購入してくれる確率を高めるために、いかに魅力的な販売サイトにできるか。
リスティング広告、SEOからはじめ、細かな知識と、実践での経験を重ねる必要があります。ということは、3、4の選択肢をとる場合でも、インターネットでのマーケティングに相当、力を入れなければならない、ということです。また3.4の選択肢は、自社製品に相当の魅力がなければ、自社で販売しようと思ってもなかなか売れない、ということになります。
自社の製品をいかに多くの人に知ってもらい、購入意欲を高めることができるか、重要となります。これらのことを考えると、自社の製品を自社自身で売って、利益を高めようという考え方は、簡単なものではない、ということが分かります。
この大変さを考えるのであれば、卸先の小売店にインターネットでの販売をがんばってもらって、その製品の使い方、売り方、見せ方などの情報提供を、製造業の会社としては行っていった方がよい、ということにもなります。卸先の小売店が、自社の製品をがんばって売ってもらえば、製造業である自社としては、あまり販促費がかからなくて済むのですから。
重要なのは、いずれの方法をとるにしても、その方法のメリット・デメリットを考え、とるべき選択肢を考える、ということです。簡単な決断をしてはいけません。自社の製品をどうしたいのか、考えてみてください。
最新のコラムやQ&A、ニュースレターは、無料メルマガ「銀行とのつきあい方」でお届けしております。銀行の動向、資金調達、資金繰り改善、補助金、経営改善等に関する情報を取得いただけます。下記のバナーよりご登録ください!