なぜ今月の売上が大きく下がってしまったのか
目次
売上の大きな上下による経営者の感情
私たちが関わらせていただいている企業において、5月に入って売上が大きく落ちた、という声をよく聞きます。企業において、売上は水物であり、ある月に売上が大きく上がることもあれば、下がることもあります。
経営者の感情として、売上が大きく上がった月は「やっとここまでの売上を上げられるようになった。」と安心してしまいがちになり、逆に売上が大きく下がった月は「なんで売上が上がらないんだ。もうだめかもしれない。」と、気持ちが落ち込んでしまいがちになります。
売上が大きく下がった時に、経営者は、なぜ売上が大きく下がったのか、その要因を探ることをどんな方でも行うでしょう。要因には、次のことがあります。
売上が大きく下がった要因1:季節的な要因。
例えば、飲食店では、12月の忘年会シーズン、3月4月の歓送迎会シーズンに売上が上がり、そういうイベントがない月においては売上が下がります。
季節的な要因が考えられるのであれば、必ず前年も、前々年も、季節により月次売上が同じように推移しているはずです。それが確認できれば、売上が下がったのは季節的なものが一番の要因と考えることができます。
例えば、以下のような月次推移だとします。
売上月次推移(単位:万円)
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
28年 | 320 | 210 | 410 | 350 | 240 | 260 | 300 | 230 | 320 | 310 | 350 | 490 |
29年 | 330 | 250 | 390 | 400 | 270 | 300 | 290 | 210 | 300 | 350 | 340 | 480 |
30年 | 380 | 230 | 360 | 380 | 260 |
5月は例年、売上が下がる月であり、その傾向が前年、前々年で見られるのであれば、売上が大きく下がったのは季節的な要因であると考えることができます。
売上が大きく下がった要因2:ある販売促進をやめた。
今まで行ってきた販売促進をやめたことによって、売上が大きく下がることがあります。
例えばチラシを毎月2回まいていた小売店が、コスト削減を理由にチラシをまくことをやめてしまうことによって、売上が大きく下がることがあります。その場合、今までコストでしかないと思っていたチラシが、実は売上の多くをつくっていた、ということになります。
広告宣伝費は、どうしてもかさんでしまう費用になるので、コスト削減を考える経営者にとっては、削減の対象としてしまいがちな費用です。しかし広告宣伝費の削減によって売上がなくなってしまえば、元も子もありません。
一方、無駄な広告宣伝費も存在します。そのような広告宣伝はやめなければなりません。無駄な広告宣伝費、一方でもっと投下していくべき広告宣伝費を見分ける方法、それは一つ。広告効果計測しかありません。
一つ一つの広告で、どれだけの売上・利益が出たのかを、計測するのです。
例えば、以下のように計測します。
売上 | 粗利益 | 広告費 | |
---|---|---|---|
広告A | 120万円 | 48万円 | 20万円 |
広告B | 20万円 | 8万円 | 30万円 |
広告C | 350万円 | 140万円 | 80万円 |
広告別に、そこからの売上を計測します。上記でいえば、広告Bは大きく赤字となってしまっているので、削減対象となります。しかしこのような数字が見えていないと、経営者としては広告Cが広告費負担80万円と大きく、それを削減してしまうことになります。
その結果、広告Cからの売上350万円がなくなってしまって、売上が大きく落ち込んで、本末転倒の状態になってしまいます。
売上が大きく下がった要因3:大口得意先からの受注減
売上が少数の得意先に依存してしまっている企業があります。
例えば,建設業や製造業の中で、元請け先が少数の企業に偏っている企業です。
例えば、得意策別年間売上の内訳として、以下のような企業があるとします。
年商120百万円
内訳
A社から 42百万円
B社から 26百万円
C社から 22百万円
他20社から 30百万円
このような企業の場合、A、B、C社いずれかからの受注が大きく減少すれば、売上は大きく下がってしまうことになります。
売上が大きく下がった要因として、外部要因も考えてみる
売上が大きく下がったのであれば、今まで述べたように3つの要因
1.季節的な要因。
2.ある販売促進をやめた。
3.大口得意先からの受注減。
を考えてみます。
そのいずれにもあてはあまらない場合、次に考えるのは外部要因です。
外部要因として考えられる例は、以下のとおりです。
1.自然災害による、直接、間接的要因
東日本大震災により、被災地企業はもちろん、被災地企業でない企業も、物流が止まったり、材料が入らなくなったり、停電・原発・自粛ムードなど大きな影響を受けました。
2.風評・ニュースの影響
(例)BSE問題により焼肉店の売上が大きく減少した、テロにより旅行客が大きく減った。
3.強力なライバルが現れた
(例)飲食店が、近所に集客力の強い飲食店ライバルが現れて、そちらに大きく客をとられてしまった。
4.法律の改正による影響
(例)規制強化により今までのビジネスが成り立たなくなった。
5.自社の悪い評判
(例)自社の悪い評判が広まってしまった。
売上が大きく下がってしまった要因として、このような外部要因が考えられます。
売上が下がった要因がどうしても見つからない場合
しかし、今まで述べてきた、いずれの要因もあてはまらないで、売上が大きく下がってしまうこともあります。売上が大きく下がってしまった。しかしその原因が全く見当たらない場合です。
この場合、企業としてはどうしたらよいのでしょうか。
この場合、売上が大きく下がってしまったのは、たまたま。つまりバイオリズム的なものかもしれません。人間だれでも、調子の良い時もあれば、悪い時もあります。企業も、調子の良い時もあれば、悪い時もあります。
野球でも、バッターがどんどんヒットを打てる時期もあれば、全く打てない時期もありますよね。
耐えて、調子が戻ってくるのを待ちます。
そして今月は売上が大きく下がったが、翌月や翌々月に売上が元に戻ったら、売上が大きく下がったのはバイオリズム的なもの、と考えることができます。たまたまの流れ、と考えることができます。
一方、2、3ヶ月しても売上が大きく落ち込んだままであったら、売上が下がった要因は必ずあるものです。早急にそれを探し出して、対策をとっていかなければなりません。また、いくらバイオリズム的なものとはいっても、売上が大きく下がった月において企業が、何も手をつけないのはいけません。
いろいろ対策を考え、行動していくことが必要です。
例えば、飲食店だったら、売上が下がったら店員は時間の余裕ができるわけですから、街頭に繰り出して呼び込みを行ったり、過去のお客様リストにDMをうって来店を促す。
ネットショップだったら、過去購入したお客様などにメールでDMを送って、再来訪を促す。
このように、とにかく模索してみる、ということが必要です。
売上を上げるのは、執念です。なんかのテクニックというよりも、まずは行動量がものを言います。