会社の「強み」「弱み」って何だろう
昨今、金融円滑化法により「借り手の申出により返済条件の変更(リスケジュール)を行う際には、経営改善計画書を作成し、提出し、その進捗を管理するように」と定められています。同法は金融機関に対し、中小企業へコンサルティング機能を有することを求めており、金融機関はそれに応えるには決算書・試算表だけでは足りないことから、リスケジュール時のみならず新規融資の審査時においても、特にプロパー融資については特に、その作成を借り手に求めることが増えました。
大半の金融機関では制定の書式が用意されておりますし、インターネットや書籍を通じても色々な形式のフォーマットを入手することができます。もちろん、本来的には金融機関に見せるために作成するものではなく、自らの存続と発展のために必要な条件や経営方針を確認、振り返るためのものではありますので、これまでお作りではなかった会社様におかれても、今後はその作成を考えるべきではあるのですが、慣れないことをするのも大変なことでしょう。
さて、大半の計画書の書式には、会社の「強み」を記入する欄があります(それと対比させて、「弱み」も記入する書式も多いです)。
また、会社の経営方針を決めるツールとしてよく使用される「SWOT分析」においては、「強み」「弱み」は会社の内部要因についての現状認識をするために区分され、双方の内容を挙げていく形式となっています。
会社の状況を受け止めて、これから生き残るための方向性を知るためにはこの分析は経営としても欠かすことができない、基本的なものではありますが、実際やろうとしてみると、そうそう簡単なものではないことに気づかれた経営者の方も多いのではないでしょうか。「強み」と「弱み」を区分することは、とても大変なことなのです。
なぜなら、「強み」と「弱み」は、ある種裏返しの関係であり、前提条件を少し変えるだけで、簡単に逆側にすることができるから、です。
例えば、
・「うちの会社は“社長の営業力”」が強み
・「社長以外に営業できる人がいない」が弱み
⇒ひっくり返すだけで、どちらにでもなってしまう
・「コミュニケーションができている組織」が強み
・「風通しが悪い」が弱み
⇒社内でも、人によって、おかれた立場によって状況が異なってしまう
・「地域社会に貢献している」が強み
・「地元以外には取引先がない」が弱み
⇒意図的にやってきたことだとしても、考え方でどうにでもなってしまう
といった具合です。
「強み」は、一旦定義されればそれを如何にして伸ばしていくのか、という経営戦略の根幹となるものですから、その本質を外すわけにはまいりません。
では、どのように考えれば、より正確な「強み」の定義ができるのでしょうか。
目次
1.「基準値」は今日現在から未来に向けた視点とする
過去はこうだったいう考えに基づくのではなく、今日現在を基準とした将来においてはどうなのか、という考えによります。先の例でいえば、社長の営業力に自信があっても、一方で他の方の営業力に不安がある、ということであれば現在社長が行っている営業が、これからも自社の強みであり続けるのかどうか、ということがポイントです。社長様が近い将来営業から離れる予定や構想がない、であるとか社長様の持つ顧客リストが増加している、ということであれば、「強み」にするべきです。
2.売上・利益への貢献度から考える
実際に、それによって会社が利益を得ているかどうか、です。数値化して判断されるものは、極力数値によって判別します。前年、もしくは前年同月等で比較し、より向上しているか、悪化しているかによって強みか、弱みかを分けます。
3.「全社」か、「社内の一部」か(誰にとってか)を明記する
複数の考え方がでた場合、「誰にとって強みか、弱みか」を明記することで、混同を避けることができます。先の例では、「社長にとってはコミュニケーションをとりやすい」が、「一部社員にとってはそうではない」という強み・弱み双方を考えることもできます。
4.会社の将来あるべき姿に近づくものか、遠くなってしまうものなのか
これは会社がもつ理念やビジョンが確認されていることが前提ですが、それに対して近づくものか、遠のくものなのかにより、判断を行います。先の例では、理念やビジョンとして「どの地域に何を提供するのか」が提示されていれば、それに合わせて判断すれば問題はありません。
ただ書けばよい、というものではない「強み」の認識は生き残るための戦略を考える出発点
人は、弱みを挙げへつらうよりも、強みを伸ばす方が効果はより大きいといいます。
会社という組織は人の集団ですから、会社全体にとっても同じこと。だからこそ、自らの強みがどこにあるのかを知ることは会社を改善させるために、まず第一に抑えるべきものです。
時折、「自分には「強み」がない」等と自嘲される方もいらっしゃいますが、原則それはありません。なぜなら、今会社が存在しているというならば、存在できるだけの何かがきっとあったからなのです。
基本ではあるが、奥の深い「強み」の判定。是非、改めて取り組んで頂ければ幸いです。
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