間違いがちな、リスケジュールのタイミング
リスケジュールのタイミングをどう判断するか
私どもにいただく相談の中で多い相談の一つに、リスケジュールのタイミングについて、というものがあります。
リスケジュールにおいて重要なのは、そのタイミングです。このタイミングは、早すぎても遅すぎてもいけません。
タイミングが早ければ、リスケジュールをしなくてもよかったのにリスケジュールすることになってしまったり、タイミングが遅ければ、遅れる間に返済がどんどん進んでしまうので、資金が枯渇してしまうことになったりします。まず、リスケジュールを行うべきと判断するにあたっては、銀行から新たな融資が受けられるかどうか、を基準にします。
例えば、事業におけるキャッシュフローが年間0、毎月の返済金額が300万円の企業があるとします。
その企業は、年間3,600万円の返済を行うことになります。
キャッシュフローが年間0で、返済額が年間3,600万円あるため、その間に新たな融資が受けられなければ現金預金は△3,600万円、減少してしまうことになります。だから、その企業は年間、3,600万円の融資を受けられるようにしなければならないのです。
しかし、銀行から融資が全く受けられなかったり、受けられたとしても年間返済額3,600万円に到底、満たない金額の融資しか受けられなかったりすると、現金預金は枯渇してしまうことになります。
どこの銀行からも融資が受けられなくなったり、もしくは年間に消えていく現金預金を補う金額に到底、満たない金額しか融資が受けられなさそうであったりすれば、それがリスケジュールを行うタイミングであります。
しかし、どこの銀行からも融資が受けられない、ということを気づくことが遅れてしまうと、リスケジュールのタイミングが遅れてしまうことになります。
リスケジュールのタイミングが遅い企業の例
例えば、現在23年3月、現金預金1,000万円、毎月の事業キャッシュフロー0、月間返済額300万円とします。
今、どこの銀行からも融資が受けられないことが分かったら、リスケジュールするタイミングは、今、ということになります。
しかし、今、融資を申し込まず、そこから3ヶ月×300万円=900万円の返済を進めて、23年6月に残り現金預金100万円になったところでやっと銀行に融資を申込み、審査が通らず、どこの銀行からも融資が受けられないということが分かったとします。
その場合、リスケジュールを行っても残り現金預金が100万円しかありません。
融資が受けられないことに、気づくタイミングが遅いのです。
23年3月時点、残り現金預金が1,000万円の時点でどこの銀行からも融資が受けられないことに気づいて、すぐにリスケジュールを行えば、残り現金預金1,000万円がある状態になり、多少は余裕を持って、経営を行うことができます。
ここから考えると、各銀行のあなたの会社への融資スタンスを常に把握しておき、リスケジュールのタイミングが遅くなりすぎないようにすることが重要であることが、分かります。
また、次のようなケースではどうでしょう。
年間の事業キャッシュフローは0、年間3,600万円の返済があり、一方で現在は、ある銀行で1,500万円は融資が受けられそう(ただその銀行から今後1年間は追加融資は受けられなさそう)であるが、他の銀行からは融資が受けられる見込みない。
この場合、年間で消えてしまう現金預金3,600万円に対して、年間で受けられる融資が1,500万円しかなく、リスケジュールを行いますが、その1,500万円の融資は、すぐに受けておくべきです。
融資を受けられない他の銀行ではすぐにリスケジュールを行い、一方で1,500万円の融資を受けられる銀行においては融資を受けておき、2,3ヶ月返済したら、その銀行でもリスケジュールを行うのです。
そうすると、現金預金をもっとも確保できる状態でのリスケジュールということになります。
1,500万円の融資を受けられる銀行には、実際に融資金が入金となるまでは、もちろん他行でリスケジュールを進めているという話をしてはなりません。
また、融資を受けたらすぐにリスケジュールを行うと、はじめからその気だったとその銀行から思われてしまうので、2、3ヶ月は返済を行って、それからリスケジュールを行います。
またその1,500万円の融資が信用保証協会保証付融資だったら、他行での保証付融資のリスケジュールを同時に進めてしまうと、その1,500万円の融資の保証協会保証はおりないことになってしまうので、それも間違えてはなりません。
このように、各銀行の融資スタンスをはかり、リスケジュールのタイミングが遅くならないことにすることが重要です。
リスケジュールのタイミングが早すぎる、とは
次に、リスケジュールのタイミングが早すぎないようにする、とはどういうことかについて述べます。リスケジュールでも、リスケジュールをしなくてもよいのにリスケジュールをしてしまっている企業を時々、見ます。
特に、金融円滑化法によりリスケジュールという手段が一般的なものになってから、リスケジュールを行わなくてもよいのにリスケジュールを行っている企業を、多く見受けます。
第一に、銀行から普通に融資が受けられるのに、その融資を受けることを選択せず、リスケジュールしてしまう企業、です。
例えば、年間の事業キャッシュフロー0、年間返済額3,600万円の企業で、年間3,600万円の融資を受けられる企業であるにもかかわらず、これ以上融資を増やしたくないという理由で、リスケジュールを行ってしまう企業があります。
この場合、リスケジュールを行ってはなりません。
リスケジュールは、銀行から融資が受けられず、返済負担が大きくなった場合にとる「次の手段」です。
なぜなら、リスケジュールを行うと、やはり銀行は、リスケジュールを行った企業に対しては厳しい見方をするようになるからです。
その銀行は、その企業に対し、リスケジュール期間中は融資を出さないし、また返済を再開し、正常な状態に回復するのも時間がかかります。
このように、リスケジュールをすべきではないのに、リスケジュールをしてしまう企業は、タイミングが早すぎるのです。
一方で、リスケジュールをするべき時にリスケジュールをせず、現金預金が枯渇してしまう企業、また枯渇して、それでもリスケジュールをせず、買掛金や給料などの遅れにしわ寄せをしている企業もあります。
リスケジュールは、タイミングが遅くても、早くてもいけません。適切なタイミングで、リスケジュールを行うことが大切です。
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