実態バランスシートによりあなたの会社は評価されている
実態バランスシートとは
今回は、見えない企業の実態把握をするための、「実態バランスシート」の活用について説明させていただきます。決算書の中の貸借対照表は、ある一時点の会社の財政状態を表した表で、通常、略してB/S(BalanceSheet)と呼ばれています。
貸借対照表では、経営者が意思決定した結果が、具体的な姿として表されています。したがって貸借対照表は、会社設立以来の経営理念、経営方針の縮図です。しかし、実際に企業において作られる、貸借対照表を含めた決算書全体としては、企業の実態を正確に表しているとは言えません。
通常、決算書の数字面ばかりにとらわれがちですが、受取手形・売掛金・棚卸資産等といった資産の数字の裏には、企業の営業活動の実態があります。そうした実態をも合わせて判断しないと、正しい資産価値は把握できません。
資産性に乏しい勘定科目が含まれていたり、経理処理に一貫性を欠くケースがあります。
そのため、銀行は決算書の数字に修正を加え、より実態を把握するために、実態バランスシートを作成しています。私が勤めていた銀行では、決算書を融資先企業からいただいたら、まずシステム登録を行います。それで抽出された決算書に基づいて、決算修正を行います。
それと同時に会社の債務者区分を行います。そこでは、全ての融資先企業を、正常先・要注意先・破綻懸念先等・実質破たん先・破綻先に分類します。自社の決算書から実態バランスシートを作成して、自社の企業体力を把握してみて下さい。会社本来の姿が見えてきます。
実態バランスシートの作成方法
銀行において、実態バランスシートは、以下のとおり貸借対照表を修正して作成されます。(企業側においても以下のとおり作成してみることができます。)
- 回収不能の資産がある場合は、回収可能額に修正
- 時価のある資産については、時価ベースに修正
- 粉飾によって実態と乖離している資産については、実態ベースに修正
主な勘定科目の修正方法は、次のとおりです。
- 売掛金長期間固定化した回収不能(困難)な売掛金、倒産会社への焦げ付き債権はマイナス
- 受取手形不渡手形、融通手形は不良性資産としてマイナス
- 棚卸資産不良在庫、架空在庫、換金不能な商品はマイナス
- 貸付金(1)関連会社へのものについては、関連会社の健全性を確認して回収不能と見込めばマイナス
(2)代表者・役員へのものについては、個人の収支状況、資産・負債、返済状況等を総合的に判断して回収不能と見込めばマイナス - 未収入金相手先の支払能力がなければ不良性資産としてマイナス
- 仮払金相手先の支払能力がなければ不良性資産としてマイナス
- 有価証券(1)上場株式等相場があるものはすべて時価評価で修正
(2)未上場株式等、相場のないものについては、発行主体の健全性を確認して修正 - 土地時価に修正
- 建物減価償却不足額を不良性資産としてマイナス
- 出資金(1)関連会社分は健全性を確認し修正(2)ゴルフ会員権等、相場があるものはすべて時価修正
- 繰延資産将来収益に対する貢献度、期間損益の合理的配分から判断して修正
※各銀行の修正する判定基準は異なります
実態バランスシート(見本) (単位千円) 資産 簿価 掛目・控除 時価・修正額 負債 現金・預金 5,000 5,000 支払手形 35,000 受取手形 4,000 4,000 買掛金 15,000 売掛金 30,000 △10,000 20,000 短期借入金 20,000 有価証券 1,000 +1,000 2,000 長期借入金100,000 棚卸資産 50,000 △20,000 30,000 その他負債 10,000 その他流動資産 4,000 4,000 負債計 180,000 土地・建物 70,000 △30,000 40,000 機械等 30,000 30,000 その他有形固定資産 3,000 3,000 無形固定資産 2,000 2,000 投資等 1,000 1,000 合計 200,000 △59,000(※1)141,000 (※2)180,000
上記会社の貸借対照表(簿価上)は、純資産が20,000千円(200,000千円-180,000千円)でした。しかし修正を加えると、純資産が△39,000千円(※1-※2)で債務超過になっています。実態バランスシートを作成すると、現状、かなりの会社が債務超過になっていると思われます。
債務超過というのは、危機的な状態であるために、その債務超過額を何年で解消できるか検討して、対応策を考えて下さい。それを経営改善計画書・5ヶ年損益予定表等に落し込んで、目標を設定して、強い収益構造、強固な財務体質の会社に変身することが大切です。
以上、実態バランスシートを作成することによって、現状の会社の問題点があぶりだされてきます。会社の業績が悪化している会社は、早急に対応策を考えましょう。事業再生するためには、即実行することが重要であります。
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