事業再生のために必要な経営者の資質
会社が再生するための重要な要素
会社が再生できるか否かの要素の一つとして、「会社経営者の資質」が判断材料にされたり、もしくは重要視されたりします。また金融機関の方々や、取引先利害関係者の方々も、非常に「会社経営者の資質」を重要視しています。
ここで、「事業再生のために必要な経営者の資質」を、次の2つの観点より、述べてみたいと思います。
経営者の資質「精神力」「判断力」と「リーダーシップ」
私は何と言っても、経営者の資質には精神力・判断力がより重要であり、「会社と社員を守り抜く」という強い精神力を経営者が持てるかどうかが、会社を再生できるかどうかの一番の要素であると考えておりますが、「精神力」「判断力」と「リーダーシップ」の、両面が優秀な社長さんと、そうでないダメ社長さんの場合とを比べてみましょう(「ダメ社長」という厳しい表現を使わせていただくことをお許しください)。
まず「精神力」「判断力」について・・・・
優秀な社長さんの場合
- 強い志を持ち、常にポジティブ(積極的)に物事を考えられる。
- 時間の大切さを知っているので、決断も非常に早い。
- 社員に対して信頼を置いている。
ダメな社長さんの場合
- 猜疑心が強く、社員を信用していない。
- 優柔不断であり、肝心の決めごとを社員任せにする。当然、決断を先送りにしがち。
- 苦言を呈する社員を遠ざけ、イエスマンしか近づけない。
次に「リーダーシップ」について・・・・
優秀な社長さんの場合
- 社員のさまざまな意見を聞き、その情報をもとに分析し、的を得た的確な判断を下せる。
- 社内の規律は厳しく、信賞必罰。
- モチベーションが高く常にミッション(使命)を持ち続けている。
- 会社の未来像が明確に示されていて、社員にやる気を持たせる社風がある
ダメな社長さんの場合
- 社長であることを鼻にかけ社員の痛みが分からない。また分かろうとしない。
- 社内の規則がなく、指示命令系統が徹底していない。
- 失敗を社員のせいにしたがるため、社員からの忠誠心も薄い。
- 社員にいらだった表情や怒声をあげる。
このように、優秀な社長さんとダメ社長さんを比べて見ると、ダメ社長さんは、明らかに自己保身に走り、会社や社員をないがしろにしている社長さんが圧倒的に多く、結果として会社経営がうまくいかない方が多いものです。
数年前会社を失ってしまった経験から
なぜ、私がそれを断言できるのか。実は私自身も数年前までダメ社長さんの典型であり、数年前会社を失いました。
その時のすべてを失った喪失感・孤独感は、死に体と同然であり、まだ必死で企業再生のために戦っていた時の方がどんなに精神的に充実感があったかを全国の社長さんに分かってもらい、私と同じ過ちを繰り返してもらいたくないのです。
私はその後、数々の経験を積み、いかにダメ社長さんの行動が事業再生に悪い影響を及ぼすか、痛感させられました。よく、会社の社長さんの給与が高いのは精神力及び判断力に秀でていて、かつ大勢の社員をその精神力及び判断力をもって生活させているところにあると言われております。
ところが好況期には頼れる精神力・リーダーシップをいかんなく発揮し、事業も順調に進んでいたはずなのに、時代も変わり厳しい経済環境の中で会社経営が悪化し始めると、守りの経営に慣れていないせいか、社長さんの10人のうち10人ともその精神力及び判断力が鈍ってくるものです。
本当に社長さんは攻めには強いのですが、守りに対しては非常に弱くなってしまいます。
また、社長さんを取り巻く環境は非常に厳しく、他人には言えない悩み・いらだち・孤独感にさいなまれ、「経営」という道から「焦燥感という非経営」の道に行ってしまうものです。
そうなると、お客様や社員及び金融機関に対して、見かけの冷静さを保っていくことが精一杯であり、そんな状態で相手に弱みを見せてしまえば、今まで築き上げた会社が、さらに窮地に追いやられてしまう悪循環に陥ってしまいます。
会社経営に窮した数多くの社長さんにお会いするたびに、私はこのことを痛感するのです。しかし、「なんとしても会社を守り抜いて見せる」という強い意志をもった社長さんの会社は、必ず再び蘇り復活していくことができます。
冷静に物事を判断し、「経営」という道の原点に立ち戻ってください。たとえば起業した時のポジティブに富んだ、前向きな気持ちを思い出して下さい。私自身、社長さんの優秀な精神力及び判断力を再び回復出来るようにするのは、私の重要な仕事、いや責任の一つと考えております。
そしてこの厳しい時代を共に戦いぬき、以前の元気ある笑顔の絶えない会社に蘇りましょう。私もまた、全国の中小企業の社長さんのそんな笑顔を取り戻すことを使命とし、共に戦い抜いていくため、今も、これからも努力を続けたいと思います。