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中小企業金融円滑化法において銀行はどういう行動をとってくるか

前回のメルマガにおいて「中小企業金融円滑化法の効果」と、今後の課題について説明しました。今回はそれに引き続き、銀行がそれにより、どのような対処をしてくることが想定されるのか、をお伝えしていきます。

最大の問題点は「銀行の抱える含み不良債権」

今日現在では金融円滑化法は有効であり、銀行も相応に返済条件の変更(リスケジュール)を受付け、対応している場合が大半ですが、これはあくまで一時しのぎ的な要素を含んでいます。

 

なぜならば、「条件変更をしても、債務者が経営改善計画書等の資料を債務者が銀行へ提出することで、格付けを落としたり、不良債権としたりしなくてよい」こういうことを銀行が乱発することで「本来であれば格付けを要管理先以下(不良債権とされる格付け)にしなくてはならないものまで、無理やり銀行が格付けを下げずにおくことで、自らの貸倒引当負担を軽減して、見かけの利益を出している」ことが発生していると考えられるためです。

 

日銀資料によれば、不良債権の基準が緩和されたことによって、平成22年3月決算期の不良債権比率は、大手行(メガバンク等)で0.6ポイント、地方銀行で1.6ポイント低下したとのことですが、実際の経済の中で生きている私たちにとって、これは現実味を感じるものではありません。

 

主要行で平成21年に3.0%~8.0%程度とされる不良債権比率を、自らの収益でこれ程減らそうとするならば、簡単な試算上4~5兆円の利益を排出しなければなりませんが、そのようなニュースは見たこともありませんし、一方日本の企業全体が収益を改善させて、問題なく格付けを上げたというような話も聞いたことがありません。

 

従って、上記の数兆円の全部、とは言えなくとも、かなりの部分については金融円滑化法による見せかけの正常債権であり、本来は不良債権とされてしまう余地が十分にあるものだと考えざるを得ないのです。

 

ただしこれは、銀行のみが責められる内容とは言い切れません。

 

銀行員一人一人にとっては、自分の担当先の格付けがより良い方が、自らの融資先に対し厳しいことをしなくて済みますし、実際それにより救われている中小企業も存在するであろうからです。

中小企業金融円滑化法のポイントに立ち返る

元々、金融円滑化法はリスケジュールを行うにあたり、債務者に対しては「経営改善計画を立案・作成し、実行していくこと」を求めています。

 

自力で作成することができない債務者に対しては、各金融機関が指導を行う形で、共に作成することを認めており、またそれは、リスケジュールを実行した後の作成でも可能とされています。

 

しかし、そもそも経営改善計画書は、誰のために作成するものであったでしょうか?

 

昨今、この規定を利用する形で「経営改善計画の作成代行を行う」ことを売りにしたコンサルタントも増えてきました。多くの場合、数十万円程度で数十ページの計画書を作成してくれることが多いようです。

 

しかし、経営改善計画は、経営者が自らその改善計画の内容を実行していく意欲があることが前提です。その計画の作成を人に任す、という行為に意欲が感じられるはずがありません。銀行員が、明らかに社長が作ったとは思えない、表面上だけはきれいな計画書をみて評価してくれると思うなら、それはあまりにも早計です。

 

決して、経営改善計画の作成を全て他人に丸投げしてはいけません。どんなに稚拙でも構いません、A4用紙1枚であっても、一度は自身で書いてみるべきです。大事なことは文章のち密さや流麗さではなく、「本気さが伝わるか」ですから。

 

その上で、それを具体化する方法や、より専門的な意味での「やるべきこと」を立案していくために、誰かの手を借りる、ということであれば、とても素晴らしいことと思います。※弊社もコンサルタント会社ですが、弊社の場合は、経営改善計画はあくまで「一緒に考えて作り、実行する」というスタンスです。

 

再生していくのは中小企業自身であり、それ自体はどうしても他人がとって替わることはできません。その意思表明は、そのとっかかりの部分だけでも、自ら行うべきなのです。

 

こうして、いったん提出した計画書は、その後その計画がどの程度達成されているのか、定期的にチェックされることになります。

 

ですから、作りっぱなしではいられません。売上にせよ、利益にせよ、各項目について80%の達成が目途とされています。当然、未来のことですから、思い通りにいかないものだってたくさん出てくることでしょう。

 

しかし、未達成であれば何故なのか、代替案はあるのか、達成できた要因はもっと強めていけるのか、一つ一つ考え、実行に移していくこと、これが本来の経営のあるべき姿であると同時に、計画書の説明として機能することになります。

 

従って、何の裏技も必要ありません。ただただ、これまでの経営内容を振り返り、現状を認識した上で次の展開を定める、この繰り返しと循環が求められるのみであり、むしろ銀行「のみ」にフォーカスをあてる必要がないのです。

 

これまで、経営改善計画をつくってこなかった方におかれても、簡易的なものでよいので一度作成されることをお勧めします。誰のためでもなく、ご自身の会社と、ご自身の周囲の皆様のために。

自社が「不良債権」でも気にしない

最後に、ここまで不良債権だ何だと書き連ねてきましたが、仮にご自身の会社が不良債権に該当する可能性が高いと判断されるとしても、それを気にしすぎる必要はない、ということも申し添えます。

 

一般的な分析上で不良債権という区分になってしまうとしても、それは基本的に過去のデータから算出されるものであり、現在と未来はさほど反映されません。

 

今後の計画において、会社を絶対に発展的に存続させることが展望されていること、その利益の範囲内で借入の返済も続けていけること、この二点が重要なのであって、ある意味過去データから一方的に決められてしまう格付けというものにとらわれ過ぎてはいけません。

 

「今はそうでも、これから正常債権に戻してみせる」くらいに思っておくのが、きっと前向きで正しいのではないかと考えます。銀行にとっても、貸付先が万が一にも倒産するようなことが有った場合に自分は無傷、というわけにはいきません。

 

例え全ての貸付が保証協会保証付きであっても、手続きや処理にかかる手間はゼロではないからです。

 

つまり、「倒産しない、と銀行が信じることのできる」経営改善計画の内容と実績が何より大切ということ。あくまで、正常な利益を出すことができる限りは企業が存続できることが第一優先であり、利益の範囲内で返済をしていくという王道にどれだけの現実味と説得力を持てるかが重要です。

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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