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中小企業金融円滑化法の効果

中小企業金融円滑化法の役割

平成21年12月4日に施行された中小企業金融円滑化法は、元々平成23年3月までの時限立法であり、その延長を行うかどうかは、これからの国会審議によって定められる予定です。

 

現状では延長される方向性で伝わっておりますが、一方で本法と半ばセットのような形で運用されている「緊急保証制度」は廃止になる方針とも言われており、今後どのように結論がなされるのかが注目されます。

 

注目していかなければならないのは当然ですが、現状ではどのような結論になったとしても対応できるようにするべきです。従って、今回と次回の2回に分けて、中小企業金融円滑化法についてお伝えしていきたいと思います。

中小企業金融円滑化法の主旨

簡単にまとめれば、下記の通りです。

 

  • 借入返済について、「元本返済猶予(リスケジュール)」を行うことを、極力借入側の申出内容通りに行うことを、銀行の努力義務として要請している。
  • 銀行にとって、リスケジュールを行った債権(貸付金)は不良債権となるが、一定条件を満たせば正常債権として見なすことができる。
  • 「一定条件」とは、経営者に経営改善を行う意欲があること、収支を改善する計画を立案すること、経営改善計画を作成し実行していくこと。

 

まとめると、「経営改善計画をつくり、収支を改善する意欲と決意を見せること」で、銀行にとっては、リスケをしても不良債権が増えない→引当が増えない→赤字が増えない。債務者である中小企業にとっては、新規の借入を見込めない場合に、財務収支をゼロ、または限りなくゼロに近づける方法を手に入れる、というものです。

 

一方、中小企業金融円滑化法の中では「リスケジュールをしている、という事実のみで次の融資を謝絶することはない」ことも定められてはいますが、現実的にはこれは見込薄といってよいでしょう。

 

実務上は、これまで通り「リスケジュール中は、新規融資の見込はほとんどない」と考えるべきです。

中小企業金融円滑化法の利用状況

中小企業金融円滑化法は、その実績の開示も金融機関に求めていることから、ほとんど全てのリスケジュール申込に金融機関は応じているようです。

 

施行された平成21年12月から、平成22年6月までの間に銀行へ寄せられたリスケジュールの申込は47万件程とされています。平成21年12月時点では7万件程でしたから、約40万件が、およそ半年の間に積み増しされたということです。

 

そこからどれだけがリスケジュール実行されたのかといいますと、企業側が自ら申込を取り下げた案件と審査中の案件を除くと、リスケジュールが謝絶された案件はわずか3%程度に過ぎません。

 

おおよそ、余程のことがない限りは受け入れてもらえる、としてよいのでしょう。

 

実際、弊社での取組においても、本法の施行前ならば「月額500万円の返済をリスケジュールするなら、200万円までしかできない」と、銀行から言われていたものが「元本据置(リスケ中は元本返済が0円、利息のみの支払)でよい」と言われることも随分増えました。

 

※月額200万円まで、と言われてそれを素直に受け入れるかどうかは、全く別の問題であり、弊社としては常に元本返済を0円にする交渉のお手伝いを行っております。

 

以前はリスケジュールの阻害要因となっていたCLOや私募債という、「その仕組みや契約上、リスケジュールができないもの」ですら、若干の注意事項に気を付ければ「通常のプロパー借入に切り替え→その借入をリスケ」という手順でのリスケができるようになりつつあります。

 

47万件の中には、会社としては重複しているものも数多く含まれていると考えられるため、社数での換算は困難です。

 

しかし、日本の中小企業は約430万社。その中での数十万件、という規模を考えれば、リスケジュールというものが決して珍しいものではなくなったとは言えます。

中小企業金融円滑化法の今後の課題

東京商工リサーチの発表によれば、平成22年度上半期(4~9月)の倒産件数は、前年比で15.2%の減少(6,555件)となっており、消費低迷や円高の進行等で収益確保が難しい中で、中小企業金融円滑化法が一定の役割を果たしたとされています。

 

確かに、この期間の倒産は減少しました。一方で負債総額としては前年比で10.5%増加となりましたが、これは日本振興銀行や武富士の持つ倒産負債が大きい影響であり、中小企業にとって考慮するべきものではありません。

 

しかし、本当の勝負はこれからです。

 

中小企業金融円滑化法が仮に継続になったとすれば、リスケジュールの継続はできる可能性が高まります。しかし、新規の借入は困難なままです。現状の国家財政を考えると、日本と言う国自体が借金まみれになっているため、新たな中小企業向け貸出というものは、今後とも抑制され続けることでしょう。

 

従って、中小企業はあくまで自らの事業収益で、経営改善を目指さなければいけません。

 

仮に中小企業金融円滑化法が廃止になったとしても、銀行にとって「リスケジュールの延長はできませんので、売れる資産を全て処分して下さい」と言うことは困難です。これは銀行にとっても体力を削ることであり、一斉に行うことは自らの首を絞める行為です。

 

よって「自力で収益を出し、再建可能な貸出先」と判断される相手については、リスケジュールの続行をせざるを得ません。となれば、銀行にそれを認めさせた企業にとっては、これまでと大きな違いは起こりません。

 

しかし、そのためにはやはり、事業収益を出していくことが必要なのです。つまり、同じことなんです。

 

一度出した経営改善計画を、銀行のためでなく自らが継続し続けるために現実化し、その中の「財務・資金計画」部分について、企業の利害関係者として銀行にも協力を求める、そのためにも経営改善計画を作成し、実行していくという循環、本来の筋は、何ら変わりはないのです。

 

中小企業側にとっては、このような対応が求められると考えます。ただ一方、銀行側の状況や考え方、対応を予想しておくことで、より成功率を上げていくことも必要です。次回は、その部分にスポットを当ててお伝えする予定です。

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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