戦術に走っても意味がない
会社再生のための方向性
いったん傾いてしまった会社を立て直すためには、方向性というのはとても重要です。私たちにご相談いただいたら、どのように会社を立て直すか、方向性を定めます。
例えば、会社を立て直すために次のようにやるべきことの項目を決めます。こちらは建設業の例です。
○財務内容改善
・資金繰り管理
・経理体制整備
・工事原価管理
・損益改善
○売上向上
○銀行対応
○内部管理体制整備
ここでは大きな項目だけ書いていますが、実際にはそれぞれの項目に、細かな項目が多くついております。この全てをやってこそ、その会社が再生に向かうことができるようになります。
会社再生において戦術やテクニックは二の次である
厳しい状況に陥ってしまう中小企業経営者の傾向を見てみると、戦術やテクニックに走りすぎのことが多いです。
例えば、
「銀行とリスケジュール交渉をうまく行うにはどうすればよいですか。」
というご相談がきたとします。確かに、私たちは相談してこられた経営者に、リスケジュール交渉の方法についてお伝えします。しかし、例えばその企業が建設業であった場合、リスケジュールの話の後、
「工事原価管理はどのように行っていますか。」
と聞くと、実行予算は立ててもその結果は振り返りしていない、サービス工事は安易に受けている、外注先から当初予算からオーバーの請求書がきてもそのまま払ってしまっている、結果1件の工事で本当は粗利が25%とれるはずが結果を見ると粗利が5%まで下がってしまっている、というように、とてもずさんな工事原価管理の状態になっている、ということが多いです。
これは建設業の例ですが、どの業種でも同じことです。
例えば銀行対応のテクニックだけ知って、リスケジュールはうまくいっても、利益改善のことや、売上向上のこと、内部体制整備のことなど、何もできていなければ、その会社にとってなんの解決にもならないのです。
そこを、私たちは面談相談の場で、指摘できるかぎり指摘し、その会社においてやるべきことを列挙します。そして、その列挙した、やるべきことは全てやってこそ、その会社が再生への道を歩むことができます。
このようなことを間違ってしまうと、銀行からお金を借りればなんとかなる、銀行でリスケジュールを行えばなんとかなる、と勘違いしてしまい、根本的な改善が行えないことになります。
会社再生のための方向性を経営者がいかに自分のものとするか
また、このようなことは、本当に多くの経営者の方々が理解し、自分の考え方として浸透するまで、口すっぱく何度もお伝えする必要があります。
経営者が真にこのことを理解しないと、私たちがいくら、その会社の再生のための取組を行っても、それがなかなか進んでいきません。
例えば、再生への取組の中の一つ、売上向上戦略において、私は経営者の方が間違った方向性を持っているのなら、それをはっきりと指摘します。
製造業の会社の経営者「売上が上がらないから飲食店を開きたい」などと言おうものなら、「やめてください」「どうしてもやろうとするなら私たちは離れる」とはっきりと言います。
まずは見込み客を集客する、見込み客をフォローしていく、既存客をリピートさせていく、ということをその会社においてしっかりと構築し、本業の売上を上げていかなければならないにも関わらず、そのようなことをおざなりにして全く未知のことをやろうとしても、失敗するのは目に見えています。
方向性を間違えてはいけないのです。方向性をしっかり明確にすることが、私たち会社再生コンサルタントの使命なのかな、と思います。方向性を間違えることにより、会社再生への取組は失敗します。