輸出入取引(外為取引)があるとリスケジュールはできない?
外国為替取引は融資と同様の取扱い
中小企業の中には、輸出入取引を行っている企業もたくさんあります。その取引においては、よく「L/C(エルシー・信用状)」という形態が使用されますが、これはわかりやすく言ってしまえば、輸出入により商品が輸送され、販売されるまでの間、
輸入業者にとっては仕入代金を銀行に立て替えてもらい、後で銀行に支払う
輸出業者にとっては販売代金を銀行から先に受け取る
という形で、お互いの会社にとって資金繰りを楽にするものです。(他、お互いの信用を銀行により補完する等の効果もあります。)
読者のみなさまの中でも実際にご利用になっている方は多いのではないでしょうか。これは銀行にとっては「与信」の一種であり、融資と同様に取扱されます。
一般的に「L/C枠」と呼ばれており、当座貸越や商業手形割引のように、極度、つまり「枠」として考え、○○○○万円までなら、銀行は立替払い前払い)をしてくれるということです。輸出入に関わる立替払い・前払いに使用する当座貸越に近いものと考えれば、わかりやすいのではないでしょうか。
輸出入取引のある銀行でのリスケジュール
通常の銀行融資において、新たな融資を銀行から受けることができくなっていて、資金繰りが厳しい状況になっている企業は、銀行に毎月の返済を0円近くに抑える、いわゆるリスケジュール交渉をしていく必要が生じてきますが、一方で銀行と「L/C」のような輸出入取引も行っている企業の経営者の方においては、リスケジュール交渉を行うことに、大きな不安感をもたれます。
なぜかというと、
社長→銀行「大変申し訳ないが、リスケジュールをして欲しい」
銀行→社長「その場合、L/C枠を撤廃させて頂きますがよろしいですか?」
社長「…」
ということになることが想定されるからです。
具体的には、リスケジュールを行うことで、銀行から受けている通常の融資において、毎月の返済金額を減らすことができる。一方、L/C枠がなくなってしまったら、銀行に立て替えしてもらう、もしくは前払いしてもらうことができなくなる。つまり、
→ |
仕入の支払が早期化する |
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→ |
回収の受取が長期化する |
という事態になります。そして、、
リスケジュールを行う目的は本来、資金繰りを楽にすることであるはずなのに逆に資金繰りを悪化させてしまう、ということが想定されてしまうのです。
そうなれば、銀行にリスケジュールの交渉を行うのはちゅうちょしてしまうことは当然のことと言えます。
一方で、リスケジュールの申込を思いとどまったとしても、新規での融資を銀行から受けることができなければ、毎月の返済金額以上のキャッシュフロー、つまり事業で利益を出すことによって得られる現金を大きくしない限り、すぐに資金はショートしてしまいます。
逆に、リスケジュールをしたならば、L/C枠が撤廃されることで足元の資金繰りが大きく悪化します
どちらも楽なことではありませんし、どちらを選ぶかは本当に慎重に考えなければなりません。
当然、最も良い方法というのは
「リスケジュールをした上で、L/C枠は存続」することです。
これまで、弊社が、会社再生への取組みを行っている企業様においても中々困難な問題であったのですが、先日、ある企業様において、
「リスケジュールを行っている銀行に、L/Cの取扱をしてもらう」
ことを、銀行に受けて頂くことができました。
外為取引のある銀行でどうリスケジュールができたか
この企業様にとっても、これは資金繰り改善に向けた最大の決め手であり、数千万円単位での運転資金確保と同様の効果を生むことができています。
しかしなぜ、この企業様においてこれが可能であったのか考え直してみればそれは特に、何かテクニックを使った、裏ワザ的なことを使った、というわけでもありません。
- 不必要なウソや粉飾による新規の借入を目指すではなく、正確な数値による状況説明を行うことで、銀行に理解と協力を求め
- 真に経営を改善させるための方法と、その実現のための具体的な行動を明確化し経営改善計画書を作成、会社が「本当に再生できる企業であること」をアピールする。
- 現実にそれを実行しながら継続的に銀行にその達成度合い、進捗度合いを報告することで、銀行からの信頼を得る。
以上を誠実に行ってきた結果です。金融円滑化法が施行されてから、銀行は中小企業にも「経営改善計画書」の提出をしっかりと求めるようになりました。
しかし、これは元々銀行に提出するために作成するのではなく、自らがより良く経営を続けていくために作成するものです。そして、それを実行していくことが、結果的に銀行との関係もよりよくできるということであり、この企業様においては、それを正に現実のものとしたのです。
世の中には、経営改善計画書の作成、そのものを請け負うことを専門とするコンサルタントも存在します。
ですが、そのようなコンサルタントに丸投げして経営改善計画書を作った場合、大半は銀行には「自ら作ったものではない」と気づかれてしまうことでしょう。
銀行員はいつも社長と会って、日頃の提出資料を見ているのですから、それからかけ離れたものを見せられて、しかも(他人につくってもらったため)内容を説明できないとなれば、信じてもらえるはずもありません。
ちなみに弊社においてはどうしているかというと、経営改善計画書の書式はありますが、その内容を経営者の方から丸投げされて弊社だけで経営改善計画書を作るようなことはお断りしております。
経営改善計画書の内容は、経営者の方が中心に考えるのがそもそも本来の姿であり(自社の経営のことを考えられない経営者は、そもそも経営者をやるべきではないですよ)、われわれはその経営者様と一緒に考えて、一緒になって作るようにしております。
このように、通常の融資と合わせて、輸出入取引も銀行と行っている企業においても、銀行に誠実に、理解と協力を求めていきたいところです。
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