担当の銀行員が「他の銀行もあたってみたら?」と言ってきた
他の銀行にあたってみたら、と言われた背景
あなたの会社を担当する銀行員に、融資を申し込んだ際、「これから審査に入りますが、他の銀行もあたってみてはいかがでしょうか。」と言われた方は多いのではないでしょうか。
このような、銀行員の何気ない一言一言でも、銀行があなたの会社のことをどう見ているか、推測することができます。
私は銀行員時代、融資を申し込んできた経営者などに「他の銀行もあたってみてください。」と言った時、その背景にどんなことがあったのかというと、その会社への融資は困難、という銀行の方針です。あなたの会社を担当する、得意先係(営業係)や融資係の銀行員の頭の中に、銀行のその企業への方針は頭に入っています。
なぜなら銀行は、融資先企業1社1社に、決算書などから導きだされる信用格付とともに、「取組方針」といってその企業への融資スタンスも、格付決定時に一緒に決めているからです。
融資先企業への取組方針とは
例えば、次のように5段階があり、どの融資先企業においても、取組方針が決められます。
A. |
積極推進方針 |
---|---|
B. |
推進方針 |
C. |
現状維持方針 |
D. |
消極方針 |
E. |
取引解消方針 |
「A.積極推進方針」とは、積極的に融資を売り込むこと、「B.推進方針」とはAほどではないが融資を売り込むこと、という方針です。AとBの違いは、例えば自分の銀行とともに他の銀行も融資を売り込んできている場合、Aの方針であれば金利を一気に低く提示してでも融資を売り込む、Bの方針であればそこまでしない、というようなイメージです。つまり、収益度外視してでも融資のシェア(その企業においての銀行ごとの融資量のシェア)を高めるか、そこまで無理しないか、その違いがあります。
またAとBはいずれも、その銀行がその企業に対しての融資量を増やしていく方針となります。
次に「C.現状維持方針」とは、現状の、その企業に対しての融資量を維持する程度にとどめる、という方針です。融資は毎月の返済によって残高が減少していきますが、減少した分を埋めるぐらいなら融資していく、という方針です。
一方、「D.消極方針」においては、新たな融資は困難になります。返済が進むことにより減っていく残高を埋めるほどの融資まではしなかったり、もしくはその企業への融資を今後しない、ということがDの方針となります。
「E.取引解消方針」は、融資はしないどころか、いろいろな手を使ってその企業への融資を回収していく、という方針です。Eまでいくと、その企業への融資を少しでも多く、早く解消しようと、担当の銀行員は積極的に交渉してくるでしょう。
このように、「取組方針」が、どの企業に対しても決められています。ここから考えると、あなたの会社が融資を申し込んだ時に、銀行員が「他の銀行もあたってみたらどうでしょうか。」と言われたら、あなたの会社は、大きな確率で、「D.消極方針」「E.取引解消方針」ということです。
なぜ銀行は融資をその場で断わってくれないのか
だったら「はじめから融資が出ないのが分かっているのであれば、その場で断わってくれればよいではないか。」と思うかもしれませんが、なぜその場で断わってくれないのか。それは、次の理由からです。
1. |
その場で断わって、融資を申し込んだ経営者などが怒り出すことをおそれている。(一応銀行内で審査したがだめだった、という形で断りたいということ。) |
---|---|
2. |
融資の可否は、担当の銀行員で決めるのは銀行内で禁止されている。(支店長など上層部に報告し、断ることについての承認が必要。) |
このようなことから、その場で融資が断られることはなかなかありませんが、融資を申し込んでから日数がたって断ることになりますので、あらかじめ他の銀行にもあたっておいてほしいと、「他の銀行もあたってみてください。」という言葉が出てくるのです。
これが「A.積極推進方針」「B.推進方針」「C.現状維持方針」ということであれば、担当の銀行員、特にその銀行員が得意先係であれば、融資の増加というのは自分の成果となりますので、「他の銀行にもあたってみてほしい」という言葉は出てきません。
「他の銀行にもあたってみてほしい。」という言葉が出てきたら、融資審査が通る可能性は少ないと考え、早めに次の手を考えておく必要があります。
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