見積りを出して受注を獲得する企業の再生方法
多くの企業が、営業活動を行い受注を獲得する時に、見込み客に見積書を出しています。そのような企業は、見積書をいくらの金額で出すかにより、その商談から獲得できる粗利益が大きく変わってきます。
例えば、なんとしてでも受注を獲得しようと、安売りにはしってしまうと、受注は多くとれるが、粗利益がほとんどとれないことにもなりかねません。そうなると、その会社は疲弊し、赤字を出してしまい、倒産への道を進んでしまいます。例えば、弊社のある顧問先様は、リフォーム業ですが、営業マンが4名、います。ここ2年の、営業マンごとの、受注件数、売上金額、粗利金額、粗利率を分析してみました。
営業者名 受注件数 売上金額 粗利金額 粗利率 a 194 116,147,780 23,794,127 20.5% b 135 46,473,760 16,463,658 35.4% c 137 127,566,052 41,175,506 32.3% d 197 179,985,697 28,300,003 15.7%
粗利益を見ると、Cさんが一番です。Dさんより売上が低いが、確実に粗利益を稼いでいるのが見えます。
しかしCさんは、営業マンであるものの社内にいる時間が長く、一見、営業活動に外に出ていないように見えます。そのため、他の営業マンからは「Cは外に出ていなく、さぼっているのではないか。」と見えてしまいます。
しかしCさんは、しっかり粗利益を出せる見積りを出すために、リフォーム業において原価部分である、材料業者や外注業者に相見積りをとり、原価を抑えながら、正確な原価の積算をした上で、粗利益をとれる見積作りにていねいに時間をかけていたのです。
一方Dさんは、売上だけで見ると一番多く、それだけ外に出ている時間が長いため、一見、営業マンとして仕事をやっているように見えます。しかし見積りは適当で、原価は過去の工事データから適当に拾ってくるだけ。とにかく売上を増やそうと、安売りにはしっています。
またDさんの特徴は、見積りにおける予算と、実績において、ぶれが大きい、ということです。
例えばある工事において、売上100万円、原価70万円で見積りをたてても、実際に原価が90万円かかってしまい、粗利益が10万円しかなかった、このようなことが多くあります。
原価の積算において、適当に計算していたためです。
一方Cさんは、原価の積算をしっかり行っていたため、予算と実績のぶれはほとんどありません。売上はDさんの方が多いですが、粗利益はCさんの方が多いです。会社に利益貢献をもたらしているのは、粗利益を多く稼いでいるCさんの方です。
ちなみに、AさんはDさんの紹介でひっぱってきた社員で、Dさんに営業のやり方、見積書の作り方を教えられているので、やはり粗利率は低いです。
Bさんは、粗利率は高いですが、稼いでくる売上が少なすぎます。営業マンとしては不向きでも、原価の計算をしっかり行い、着実に粗利益のとれる見積書を作ることができます。
このような分析から、私はこの会社の利益向上→再生のために、次の戦略を考えました。
戦略A
他の営業マンは、Cさんに学ぶべき。Cさんを講師に、研修を行い、また見積書の作成にあたってのマニュアルを作り、見積書作成業務の標準化を図る。
戦略B
営業は苦手だが着実に原価の積算を行い、粗利益を出して予算と実績のぶれも少ないBさんを原価積算、見積書作成担当にし、AさんとDさんが外をまわって獲得してきた案件をBさんが見積書を作るように、分業制とする。
戦略Aは、営業マンの見積書作成能力の底上げを目指した方法、戦略Bは、底上げというよりも各社員の強みを生かし会社全体でしっかり利益を出せる体制を組む方法、です。
受注を獲得する際に見積書を出す企業であれば、このように営業マンごとの売上・粗利益を計測してみてください。また、それとともに受注獲得件数も計測してみてください。これは単価の向上による売上・粗利益増加の戦略につながることですので、別の機会に述べます。
そうすると、営業マンごとに数字が大きく異なることが判明し、経営者のみなさんは驚かれることと思います。そして、どうやって会社全体で利益を上げていくか、対策を練ることができます。