融資の借換えで注意すべき貸出条件緩和債権に該当
当メルマガの読者の方が経営する企業のほとんどは、銀行から融資を受けているでしょうが、融資を受けている企業は、自己査定といって銀行が行う自行の貸付金(企業から見たら借入金)資産の査定作業の中で、1社1社、債務者区分をつけられています。
区分は、
正常先
- 要注意先(要注意先の中の一般の)
- 要管理先(要注意先の中の)
- 破綻懸念先
- 実質破綻先
- 破綻先
となります。要注意先には、一般の要注意先と、要管理先があります。債務者区分が下になる融資先に対しての貸付ほど、銀行としては貸倒引当金を多く積まなければならなくなり、そのように区分がつけられた企業は、融資を受けることが困難となっていきます。
一般の要注意先であれば融資を受けるのに支障が出てきます。要管理先以下になると基本的に融資は受けられなくなります。そのため、自分の会社が、一般の要注意先以下にならないように、気をつけなければなりません。せめて、要管理先以下にはならないことです。
要管理先となる要件は、3カ月以上延滞となっている融資があるか、「貸出条件緩和債権」があるか、これらいずれか一つが当てはまることです。
貸出条件緩和債権とは
貸出条件緩和債権とは、以下の4つのいずれかの定義が当てはまる融資のことを言います。ただし、そうなった理由が、企業の信用力の悪化によるものに限ります。
- 融資期間中、金利を引き下げ・棚上げ・減額・免除したもの
- 当初の最終返済期限を延長したもの
- 分割返済していたものを、返済猶予・ステップアップ返済・期日しわ寄せ返済・期日一括返済へ変更したもの
- 正常な運転資金として算定される額以上に借入した運転資金の返済期日に、返済財源がなく、継続、延期したもの(正常な運転資金・・・売掛金+受取手形+棚卸資産-買掛金-支払手形)
ここでのポイントは、企業の信用力の悪化により、融資がこのような状態になったかどうか、です。
例えば、リスケジュール。リスケジュールとは、毎月の返済金額を、銀行と交渉して少なくしてもらったり、一括返済の期日に、その期日を延ばしてもらったり分割返済にしてもらうなど、融資の返済条件を、企業にとって楽な方向に変更することを言います。
リスケジュールは、企業側から銀行に交渉しますが、この場合、企業の資金繰りが厳しいから交渉を行うので、企業の信用力の悪化により行われるとみなされることになり、リスケジュールを行うとその企業の債務者区分は要管理先以下になってしまいます。
これが、リスケジュールを行っていると融資が受けられない理由です。
ただ、債務者区分は、1つの企業に対し、その企業に対し融資を行っている全ての銀行が同じ債務者区分をつけるわけではありません。
A銀行が要注意先としていて、一方でB銀行が正常先としているケースもあるのです。
そのため、C銀行ではリスケジュールを行っていて要管理先になっているから融資が受けられなくても、D銀行ではリスケジュールを行っていず正常先となっていて融資が受けられるケースも、なくはないのです。(ただしリスケジュールを行う場合は全銀行で歩調を合わせるよう要求されるのが通常のため、ある銀行でリスケジュールを行っていて別の銀行でリスケジュールを行っていないことはあまりないですが。)
また、リスケジュールが、単なる毎月返済額を少なくするという形ではなく、借換えという形をとっても、それがリスケジュールとみなされることもあります。例えば、次のようなケースです。
(例)既存の長期借入が2億円残っている状態で年間5,000万の返済しているという前提で、設備投資のために新たに4億円の融資が必要だが、既存の2億円と4億円を足して6億円の融資額で、年間3,000万の20年払いにしてほしいと銀行に依頼した場合。
このケースでは、銀行が「企業の信用力の悪化」により借換えの手段を使って返済額を圧縮した、と判断したら、貸出条件緩和債権になってしまいかねません。
要は「このような借換えを行う背景がどうであるか」です。
そのため、もしあなたの会社がこれから、返済額が緩和されるような借換えを行う場合、銀行としてはその借換えをどう見るか、銀行と事前に話し合っておくべきです。