他の銀行が融資を出さないことを銀行はどう見るか
私が銀行員であった時、企業が融資を申し込んできたら、いつも気にかけていたことが、その企業とつきあっている他の銀行は、融資を出しているのか出していないのか。ということでした。
あなたの会社は、銀行から時々、「他の銀行の融資残高を教えてほしい。」と言われていませんか?私のいた銀行では、融資を出している企業から、3カ月ごとに、銀行ごとの融資残高を聞くようになっていました。
そうやって、その企業がつきあっている他の銀行からも、定期的に融資が出ているのかどうか、確認するのです。
なぜ銀行はそのようなことを行うかというと、他の銀行が融資をずっと出していないということは、その銀行は、その企業に対して、融資を出せない理由があるから、です。ましてや、その企業においての融資シェアが大きいメイン銀行が、融資を出していないということであれば、他の銀行は警戒します。
メイン銀行など融資シェアが大きい銀行は、その企業についての情報が多く入ってくるのが通常であり、そこに、融資を出せなくなる情報がある、と考えるからです。
そのため、他の銀行、特にその企業に対しての融資シェアが大きい銀行がしばらく融資を出していないということであれば、銀行は、自分のところだけ融資を出してその後、痛い目にあってはいけないと、融資を出さなくなるのです。これが、銀行は横並びで、ある企業に融資が出るときはどこの銀行からも融資が出て、いったん融資が出なくなるとどこの銀行からも融資が出なくなる、大きな原因です。
横並びでどこの銀行からも融資が出なくなる事態を避けるためには、特にメインの銀行にて、定期的に融資を受けられるようにしておくことが重要です。
メイン銀行が定期的に融資を出していると、他の銀行も安心しますので。定期的に融資が受けられるようにするためには、多少のことで融資が出なくなることがないよう、メイン銀行とのつきあいは特に大事にしなければなりません。
メイン銀行からの信頼を大きくするためには、毎月試算表を見せて業績報告を行い、また3年~5年ぐらいの経営計画を作ってその進捗状況を見せ、常に深い関係を保てるようにしておくことが必要です。
ここまで行っていれば、少々の業績悪化でも、銀行はいきなり融資を出さなくなるということは、あまりないでしょう。
しかし、それでもメイン銀行が融資を出さなくなる時があるかもしれません。その時は、メイン銀行の融資スタンスの変化を知らない別の銀行が、融資を出してくれて、それで資金繰りをぎりぎりつないでいくことはできるかもしれません。
しかし、それもいずれ限界がきます。メイン銀行が融資を出さず、一方で多くの返済をし続けているということは、他の銀行から融資が出ていても、その返済負担を補えるほどではなく、早晩、資金繰りが破たんしてしまうことは目に見えています。
そのため、メイン銀行に融資を申し込んでも審査が通らなくなったら、融資の返済金額を圧縮する、リスケジュールの申し出を行うかどうか、検討する時期、ということになります。
その動きを先延ばしにすると、あなたの会社にある資金は、どんどん減っていくことになります。常に、数ヵ月後の資金繰りを見据えた意思決定を経営者は行わないと、取り返しのつかないところまで追い込まれてしまうことになります。
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