銀行との融資交渉の秘訣
私たちが、多くいただく質問の一つに「明日、銀行と融資交渉をするが、こんなことを言ったら審査が通りやすくなる、もしくは通りにくくなる秘訣があるのか?」というものがあります。
銀行と融資交渉を行うには、銀行側は、あなたの会社を担当する得意先係(営業の係)の行員、もしくは支店内の融資係の行員が、交渉相手になるでしょう。
では、交渉相手の行員に、どんなことを言ったら審査が通りやすくなる、もしくは通りにくくなるのでしょうか。答えは、そのようなものはありません、ということになります。
なぜなら、交渉相手の行員は、あなたが言ったことの9割は、忘れてしまうものだからです。融資交渉において、交渉相手の行員が、あなたの言ったことを全部書きとめますか?そんなことは行わないでしょう。
ここで、銀行内で、融資審査はどうやって行われるかを考えてみます。融資審査は、稟議書で行われます。融資申込を受け付けた行員が、通常は稟議書を作成します。その行員は、あなたの融資交渉の交渉相手の行員となるでしょう。
作成された稟議書は、次の順番で回覧されていきます。
1.支店長で決済できる融資の場合
得意先係の行員→得意先係の係長→融資係の行員→融資係の係長→次長→支店長(決裁)
2.支店長で決済できない融資の場合
得意先係の行員→得意先係の係長→融資係の行員→融資係の係長→次長→支店長→審査部(本部)の行員→審査部の部長(決裁)
支店長で決済できる融資の範囲は、各銀行で決められています。金額が総額で1億円となるまでは支店長決裁、それを超えるのであれば審査部決裁、というようなイメージで、決められています。
このように、銀行内で多くの行員に、稟議書が回覧されます。ここで重要なのは、稟議書は書面で回覧される、ということです。書面で回覧されるということは、稟議書作成時に、稟議書に盛り込まれる内容が審査を大きく左右する、ということです。
あなたの融資交渉の交渉相手の行員が稟議書を作成しますが、交渉にあたって、融資を通りやすくしてもらおうとあなたが自社のアピールを「口頭」で行ったとします。
しかし、交渉相手の行員は、その全てをメモし稟議書に書くことは難しいでしょう。つまり、あなたが融資交渉において、いくら審査に有利になるようなことを話したつもりでも、それが稟議書に書かれることは少なく、融資を決裁する支店長や審査部部長まで伝わらないのです。
では、どうやってそれを伝えるか。それは、融資交渉であなたの会社をアピールするときに、「口頭」で行うのではなく、「書面」で行うのです。
また融資申込も口頭で行うのではなく、「借入申込書」を作成し書面で行う方がよいでしょう。その方が、融資の希望条件を明確な形で銀行に伝えることができます。
そして、融資交渉においては、特に意気込む必要はなく、交渉相手の行員の質問に答えていく程度のスタンスでよいです。またアピール材料としては、事業計画書が一番強力なものとなります。
口頭で「自社の売上は今期は前期に比べ2割アップする」といっても、相手は聞き流すぐらいですが、事業計画書でそれがうたわれ、売上がアップする根拠を銀行が理解しやすいように書くと、口頭で伝えるより、よっぽど効果があります。
そのような書面で書かれたものは、稟議書に添付資料として添付されます。ということは、審査を通しやすくするにあたってあなたが伝えたいことが、融資決裁者である支店長や審査部部長までしっかり伝わる、ということです。
「明日、銀行と融資交渉をするが、こんなことを言ったら審査が通りやすくなる、もしくは通りにくくなる秘訣があるのか?」ということを考える前に、融資審査を有利にすることをいかに書面で伝えるか、を考えることの方がよほど重要です。
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