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銀行員が納得する「経費削減」について

私は前職の銀行員時代や、現職のコンサルタントとして活動している時に、多くの銀行員と接してきましたが、企業の業績が悪化すると、銀行員が経営者にまず言うことは、「御社は経費削減をどれだけ行っていますか?」ではないでしょうか。

 

そもそも、企業が利益を増やすために考える基本事項は、次の3つです。

 

1.売上を増やす。
2.粗利率を高める。(粗利率=売上総利益÷売上高)
3.経費を下げる。

 

銀行員は、なぜか「3」の経費を下げることばかりにフォーカスしてしまいます。私も銀行員時代は、そうだったような気がします。それはなぜか、考えてみました。

 

【YouTube】「【経営課題】コスト削減、経費削減が進まない時の対応策」もあわせてご確認ください。

 

銀行員は数字だけ見ている

企業の経営者であれば、利益を増やすためには経費を削減するだけでは不十分である、ということは、当然分かっていることでしょう。売上を増やし、粗利率を高め、ということを行わなければ、本当に利益は上がりません。そもそも、企業の経営者であれば業績が厳しくなった時に、経費削減は既にやれるだけやっているのではないでしょうか。

 

ギリギリまで経費を削減している状態なのに、銀行員は試算表や決算書の数字だけみて(各勘定科目の中味や、それぞれの中味がどういう意味があるのかも考えないで)、「ここの経費、多くないですか?減らしましょう。」と言う傾向があるのです。

 

また、企業の売上を作るための経費、つまり人件費や、広告宣伝費など、ある程度かけなければならない費用があります。設備投資もあります。もちろん、それらの費用は、それに見合ったリターンがその企業にもたらされなければ、無駄な経費、とうことになってしまいます。

 

  • 人件費であれば、社員一人一人が会社にどれだけの売上・利益をもたらしているのか。
  • 広告宣伝費であれば、一回の広告が会社にどれだけの売上・利益をもたらしているのか。
  • 設備投資であれば、その結果、将来どれだけの売上・利益をもたらすのか。

 

このようなことをしっかり検討した上でこれらの費用をかけることが重要なのは、経営者として当然、わきまえておかなければならないことでしょう。

 

話は逸れましたが、しかし銀行員は、広告宣伝費が前の期に比べ増えているのを見ると、ただそのことだけを見て、「広告宣伝費が上がっているから下げなければならないですね。」と言いがちです。

銀行員の経費削減に関する傾向

銀行員の経費削減に関する傾向は以下の通りです。

 

  1. 各経費の詳しい中味まで見ないで、ただ決算書や試算表の数字だけを見て、「これは多い。」と言う。
  2. 経営者は多くの場合、もうすでにギリギリまで経費を削っているのに、そこを理解しないで「もっと経費削減!」と言う。
  3. 経費を削減することとともに企業の利益を増やす重要な要素である、どうやって売上を増やすか、どうやって粗利率を高めるか、には言及がない。
  4. 売上・利益を作っていく上で重要となる費用(人件費・広告宣伝費・設備投資等)があることを理解していない。

 

しかし、銀行員にこのような傾向があることは、仕方のないことです。銀行員は経営者となったことがなく、経営者感覚は分からない、のですから。それであれば、銀行員にただ単に「経費をもっと削って下さい。」と言わせないための、経営計画や、現状の経費の内容の説明書などを、作って銀行に提出するとよいのではないでしょうか。

 

銀行員が分からないのであれば、分らせればよいのです。銀行に、あなたの会社について、もっと深く知ってもらえばよいのです。またこれらの資料を作ることは、経営者にとって、自分自身の会社のことについて、深く分析していって、現状の状態を知ることにつながっていき、自分の会社へのメリットにもなります。

 

銀行とのつきあいを円滑にし、経営者自身も自身の会社を深く見つめなおすきっかけになるこの方法、やってみてはいかがでしょうか。

 

また、「質」を落とさない経費削減の考え方を記載します。

売上は「作業量」

中小企業にとって、損益分岐が思うようにいかない原因は

 

管理キャパシティの限界
⇒新規受注分の原価・経費などの管理が、既存分と合わせて
 キャパシティオーバーとなり遅滞化することで粗利率減少、
 想定売上では黒字化に届かなくなる

 

売上を上げる、が先に立っての単価、粗利益率減
⇒売上目標が先行しすぎることで、受注に対するダンピング
 が発生、粗利率が減少する

 

の二点が挙げられます。簡単な話のように思われますが、特に前者は経営者側が気付いていそうで気付いていないことが大半でなかなか「売上を上げれば全て解決するわけではない」と割り切ることは難しいもの。しかし、

 

売上が増える = 会社の作業量が増える
利益が増えない= 事業の価値が上がらない

 

では、頑張り損というもの。売上が増えたら、合わせて利益も増えないと銀行に言い訳しにくいのはまだしも、会社全体の頑張りに対して残るものがない、という意味でもったいない話です。

 

そうなると、売上を上げていく一方で、事業を行っていくための経費をコントロールし、売上が増えても経費は削減できる、最低でも増えない、つまるところは事業経費の見直し・削減・コントロールが必要になるものです。

 

コントロール、できてらっしゃいますか?できている企業の場合、概ね売上が1億上がれば利益がいくら残るのか、という問いの答えが、現実の会計数値と同じくらいになっています。

 

利益が思うような金額になっていないのなら経費が変動費なのか・固定費なのか、という損益分岐でも使われる分析だけではなく、過剰なのか、逆に過少(コスト出しすれば売上も上がるのに出していない)なのか<事業の仕組みそのものを変えてしまうことが必要なのか、単に「もっと減らせるか」だけではない売上・利益を十分に確保するための削減・コントロールを行わなくてはなりません。

 

【関連記事】定常的な売上を確保するためビジネスモデルを見直した事業再生事例

 

事業・業務の仕組みから始める経費の削減

ひたすら1円でも下げようと見直しを続けるというのは限界があります。何より疲れます。やろうとするもの、やってきたものを止めることになるので、精神的に楽ではないのですから。

 

見直し自体は必要ですが、事業の品質やサービス水準を落とすことなくできるコストダウンは、営業や業務の仕組み化・見える化などにも取り組まなくてはなりません。また、これまでの習慣を一度取り払い、これから必要なものだけをゼロから組み合わせていく工程が必要です。それらの取組みには、経験あるコンサルタント等の専門家に任せるのもよいでしょう。

 

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