銀行融資を受けている経営者は覚えておきたい「旧債振替」
旧債振替という用語は、銀行から融資を受けている会社の経営者でしたら、覚えておきたい用語です。
旧債振替とは、信用保証協会保証付融資(以下保証付融資といいます)で受けた資金を、その銀行の既存の融資の返済にあてること、を言います。
旧債振替の事実があると、もし企業が、その保証付融資の返済ができなくなって信用保証協会の代位弁済(企業に代わって信用保証協会が銀行に弁済すること)を銀行が請求してきても、信用保証協会では代位弁済を否認することができます。そうなると銀行にとって大きな損害となります。
ただし旧債振替全てがだめというわけではなく、事前に信用保証協会が特別の事情があると認め、銀行に対し承諾書を交付した場合はよいです。
よくあるケースが、既存の保証付融資を、新規の保証付融資で借換えすることです。この場合はあらかじめ、新規保証付融資の実行時にどの既存保証付融資を返済するか、信用保証協会が銀行に交付する保証書に記載されていれば、旧債振替として将来、代位弁済が信用保証協会によって否認されることはありません。
しかしプロパー融資(信用保証協会の保証がない、銀行独自の融資)の場合は、保証付融資で借換えさせてくれる、という承諾を信用保証協会が行うことは、まずありません。
「信用保証協会法1条」には、
協会は、中小企業者等に対する金融の円滑化を図ることを目的として設立されたものである。
という記述があり、保証付融資でプロパー融資を銀行に回収されるということは、信用保証協会の設立の目的に合わないからです。
まとめますと、新規の保証付融資で既存の保証付融資を返済(つまり借換え)することは、企業・銀行・信用保証協会での事前の打合せの上、よくあるケースなのですが、新規の保証付融資で既存のプロパー融資(ビジネスローンもプロパー融資の一つです。)を返済するのは、後々大きな問題となり、信用保証協会は銀行に代位弁済することを拒否するのです。
なお、同じ銀行のプロパー融資を返済してはだめですが、別の銀行のプロパー融資を返済するのは、旧債振替とはなりません。
旧債振替の例をあげます。
- 保証付融資を受け、その資金で分割返済のプロパー融資をまとめて返済した。
- 保証付融資を受け、その資金で一括返済のプロパー融資を返済した。
- 保証付融資を受け、その資金で、手形割引を以前行って不渡りになり銀行から買い戻し請求されている手形を買い戻した。
銀行は、保証付融資が出た時に、旧債振替にならないように神経を使います。
私は銀行員時代、保証付融資が出たら、融資で出た資金が支払額ベースで到達するまで、その企業の融資金入金口座の入出金を管理していました。支払額ベースで到達するのでしたら、融資で出た資金は使い切ったということになったのです。それまではプロパー融資を返済できません。(毎月分割返済で自然に返済される分であればよいですが)
10年前の金融安定化特別保証制度で保証付融資が出やすくなった時には、次のようなテクニックを行って、既存のプロパー融資を保証付融資に置き換えていった銀行もあり(銀行にとっては貸倒れリスクが少なくなるから)問題となりました。
(例)
12月1日に、銀行が回収しておきたいプロパー融資残額20百万円を、手元にある預金で一括返済してもらう。
↓
12月2日に、あらかじめ信用保証協会から保証応諾をもらっていた保証付融資50百万円を実行する。
これは、保証付融資を実行する前にプロパー融資を返済したことになり、旧債振替逃れとなります。私が心配なのは、今回の緊急保証制度で保証がおりやすくなった今、同じようなことがおきないか、ということです。
企業にとっては、プロパー融資が保証付融資に置き換わっていくことになり、保証付融資の枠が少なくなり、不利になるのです。銀行は逆に、プロパー融資が保証付融資に置き換わっていくので貸倒れリスクが少なくなり有利になります。
保証付融資は、プロパー融資より審査が通りやすいので、なるべくプロパー融資を優先させて、保証付融資の枠は後々のためにとっておくのが、銀行つきあいのセオリーです。
私の会社に相談にこられる会社にも、あからさまに旧債振替となっているケース、そうでなくても旧債振替ギリギリとなっているケースが見受けられます。そのような事実があるのであれば、そこを銀行に対する交渉のカードとして企業側が使えるのかもしれません。
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