まとめての借換え?
私の会社が、銀行融資の相談で時々ある相談が、次のパターンの相談です。
【相談内容】現在A銀行で1.5億円、B銀行で1.0億円、C銀行で0.5億円の借入があるが、この3行の借入を、どこか1つの銀行で1本化したい。
その企業がよほど優良企業で、これら借入総額を上回る担保を提供できるならまだしも、そうでなければ、これは「夢物語」です。なぜ借換えしたいのか、経営者に理由を聞くと、
1.毎月の返済金額を楽にしたい。
2.1行でまとめた方が便利。
という答えが返ってきます。この理由について、考えてみます。毎月の返済金額を、借換えによって減額することができます。しかし、借換えを行うにしても同じ銀行内で行うべきです。
例えば、A銀行の1.5億円の借入の明細が(ここではプロパー融資か保証協会保証付融資かは考えないこととします。)
9,000万円 残り返済回数30回 毎月300万円返済 4,000万円 残り返済回数20回 毎月200万円返済 2,000万円 残り返済回数10回 毎月200万円返済
合計、毎月700万を返済しています。
これを、3,000万円上乗せして1.8億円で全部を借換えし、返済回数を60回とすると、毎月返済金額は300万円となり、借換えの効果が出ます。(この場合、条件変更とみなされ格付が下がる可能性もありますので、そうならないようあらかじめ銀行と話合っておきます。)
このように、借換えは同じ銀行内で行うべきです。なぜなら、借換えにより別の銀行の融資を返済すると、その別の銀行としては、おもしろくないからです。
他行に借換えられるのは、その銀行にとっては「恥」です。(その銀行がその企業に対して「回収方針」であれば別ですが。)銀行に、企業がケンカを売ることになり、その銀行との関係が悪化します。また、今だに「融資を受ける銀行は集約した方がよい。」ということを言う経営者がいますが、融資を受ける銀行は、できるだけ多くすることが基本です。
理由は、
- 1つの銀行が1社に対して融資できる量は、リスク分散の観点から限りがある。
- 1つの銀行だけだとその銀行が融資を渋った時に打つ手がなくなる。(融資を受けていない銀行に申し込む手がありますが、新規先に対しての銀行の審査は厳しいです。既存の銀行で融資を渋られた事態になっているのであればなおさらです。)
です。また、「現在A銀行で1.5億円、B銀行で1.0億円、C銀行で0.5億円の借入があるが、この3行の借入を、どこか1つの銀行で1本化したい。」という話をするのは、そのほとんどが、資金繰りが厳しい状況に陥っている企業です。
資金繰りが厳しい企業は、全部の借入をまとめて1本化して、返済を楽にしよう、と思うのでしょう。しかしここで考えるべきは、まず、既存の銀行で新たな融資が受けられないか、あたってみる。ことです。
「返済を進めて無借金にしたい。」と、借入れを行うことを「悪」にとらえて、資金繰りがぎりぎりでも新規借入を起こさず返済をがんばってしまう経営者がいますが、
A 現金預金 200万円 借入総額 8,200万円 B 現金預金 3,200万円 借入総額 11,200万円
どちらの状態を選ぶかは、絶対にBです。借入総額の大小よりも、現金預金の大小の方が、企業の存続のためにはずっと重要です。しかし、既存の銀行で新たな融資が受けられないのであれば、返済条件の減額交渉に進むべきです。そして、毎月の返済金額を一気に抑えます。
新たな融資が受けられない企業は、借換えの融資も受けられません。同額借換えの場合も同じです。
毎月の返済金額が1,000万円あるのであれば、それを30万円まで抑える、ぐらいのイメージでいくべきです。銀行に抵抗されて300万円ぐらいで妥協してしまう経営者がいますが、その返済金額の現金を稼ぐ力が自社にないのなら、それでもすぐに資金繰りは詰まります。中途半端な条件変更はしないで、一気に返済金額を抑えていきます。
そして、新たな借入がなくても資金繰りがまわる状況を作り、会社を立て直していきます。
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