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銀行は粉飾決算をどう見破るか

粉飾決算を行って、新銀行東京から不正に融資を引き出して、経営幹部や行員、ブローカーなどが逮捕された事件が世間をにぎわせました。ただ、この企業に対して既に融資を行っていた大手銀行は、先に粉飾決算を見破り、融資の回収をはかっていたようです。以下、読売新聞の記事です。

 

2008年11月4日東京読売新聞朝刊より
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 新銀行東京を舞台にした詐欺事件で、警視庁に社長らが逮捕された
 ソフトウエア開発販売会社「A社」(大阪市)が、新銀行から融資を
 受けた2006年、大手銀行に関連会社の決算書の粉飾を見破られていた
 ことがわかった。当時、A社の企業グループに計約5億円を融資していた
 大手銀行は、支援を打ち切り、返済を要求したという。粉飾を見抜け
 なかった新銀行の融資のずさんさが改めて浮き彫りになった。

 

 同庁関係者によると、A社は、大阪市内を中心に複数の関連会社で企業
 グループを作っており、05年ごろから大手銀行との取引を始めた。
 ところが、大手銀行が06年11月ごろ、A社の財務担当幹部だった
 Bが社長を務める通信機器販売会社から提出されていた決算書を調べた
 ところ、売上高が水増しされていたことを突き止めたという。

 

 同企業グループはこの時点で、新銀行からの不正融資の受け皿に利用
 した中野区の設備会社「C社」を含め、大手銀行に総額約5億円の融資
 残高があった。大手銀行は、グループ全社に対する支援の打ち切りを
 決め、資金の返済を要求。A社社長のDは「全額返済するから、粉飾を
 表ざたにしないでほしい」と懇願したという。

 

 結局、大手銀行は翌07年3月ごろまでに、約1億円の資金を回収した
 ほか、債権を処分し、同グループとの関係を絶ったという。
 A社は、06年3月に新銀行の上野出張所(当時)から約5000万円
 の融資を受けたほか、半年後の同9月には、池袋出張所(同)からD社
 を受け皿にして、売上高を改ざんした決算書をもとに約5000万円の
 融資を不正に引き出していた
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私が銀行員であった時、担当していた企業が粉飾決算を見破られたのは2件でした。どうやって見破られたのかというと、

 

ケース1
・信用保証協会で審査を行ってもらおうと信用保証協会に決算書を提出したが、他の銀行から提出された決算書を違っていた。

 

ケース2
・銀行に提出された決算書が、前期と当期で、数字のつながりがなかった。

 

このように、粉飾決算を行っていると、小さな「ほころび」を突破口として、銀行は見破ってくるものです。銀行の支店は、大きく「得意先係」「融資係」「預金係」と分かれます。

 

得意先係は、企業に営業して、融資案件をとってくる「攻め」の立場。

 

融資係は、融資審査にあげられた案件の審査を行い、貸倒れが増えないようにする「守り」の立場です。

 

私は銀行員時代、ほとんどが得意先係でしたので、融資をいかに売ったかで評価されていました。融資審査が通らなければ自分の成績が上がらないので、粉飾決算を見破ろうとすることはしなかったのですが、融資係ではいろいろな角度から、粉飾決算を見破ろうとします。

 

ほとんどの銀行では、決算書をコンピュータで分析して粉飾の可能性を探るソフトがあり、全ての融資先の決算書を分析しています。他に経営者への質問や実地調査などによって、銀行は、粉飾決算を見破るために、いろいろな取組みを行っています。

 

今回の事件は、実体のない会社を実体のあるように見せた粉飾決算で悪質であることから、刑事事件となったようですが、そこまでの粉飾決算でなければ、粉飾が判明したらその後の融資はいっさいストップ、回収をはかっていく、という流れになります。

 

私たちにご相談いただく企業は、多くが粉飾決算を行っています。

 

私たちは、厳しい状況に陥った中小企業を立て直していく仕事をしているので、経営者の方には正直に、粉飾決算を行っているかどうか話していただきます。その企業の状況を把握した上で、再生策を考えていきます。場合によっては、銀行に粉飾決算であることを打ち明けてもらい、その上で銀行の協力を頼んでいくこともあります。

 

粉飾決算を隠すのは細心の注意が必要であり、また経営者の精神衛生上もよくありません。粉飾決算を打ち明けたら、経営者の気持ちは楽になります。

 

【関連記事】粉飾決算の開示による債権者との協力関係構築が成功へ導いた事例

 

しかし粉飾決算を打ち明けるかどうかは、それぞれの企業の状況に応じて考えていく必要があり、慎重にならなければなりません。

 

とにかく、あなたの会社が粉飾決算を行っているのなら、「粉飾決算で融資を受けて資金をまわす。」という状態は、明らかに不健全です。その状態を変えていかなければなりません。

 

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