事業赤字の黒字化と未払先交渉の順序について
私たちが中小企業の経営者から資金繰り相談を受けていて、よく質問を受けることの一つに、
「うちの会社は銀行から融資を受けられず、一方、事業は赤字であり、また仕入先や外注先、銀行返済など、未払いが増えつつある。資金繰りがうまくまわるようにするためには、どういう順番で何を行うべきか。」
という質問があります。
まとめると、資金繰りが厳しい企業の多くは
・事業で赤字を出している
・買掛金や銀行返済の未払いが増えてきている(もしくはこれから発生しそう)
両方の状態にあります。この場合、資金繰りを良い方向に持っていくために、どうすればよいのでしょうか。資金繰りを良い方向に持っていくためには、
・事業の赤字を黒字化する
・未払い先へ交渉をする(買掛金の滞納についてはいつの時期に支払えるか、分割支払いにできないかなどを交渉する。銀行の返済については返済条件の変更、いわゆるリスケジュール交渉をする。)
両方を行わなければなりません。
では、その順番として、事業赤字の黒字化→未払い先への交渉か、もしくは未払い先への交渉→事業赤字の黒字化か。どちらの順番が良いのか。
答えは、
「同時に行う」
です。まず、未払い先への交渉を遅らせて事業の黒字化を先に行うとどうなるか。
未払い先がもっとも不安に思うことは、
「いつに支払ってもらえるか分からない。」
ということです。
外注先への支払いが遅れていて、どのように支払うかの話もなければ、外注先は今後の仕事を請けてくれなくなるでしょう。
仕入先への支払いが遅れていて、どのように支払うかの話もなければ、今後そこからの仕入が困難となるでしょう。
ただ、いつ支払いができるからそのようにしてほしいとか、分割でこのように支払いをしたい、という話をしていけば、外注先や仕入先は、協力をしてくれやすくなるでしょう。銀行返済も同じです。銀行に、将来このように利益を上げて返済を再開したいという道筋を提示して、返済を猶予してもらうリスケジュール交渉を行えば、銀行も強硬な手段に出てくることはないでしょう。
このように、外注先や仕入先、銀行への返済など、支払いができないなりに、将来どうやって支払いをしていきたいかの道筋を相手に伝えることは、とても重要であり、そこをほったらかしにしておいてはなりません。
では、未払い先への交渉を先にし、事業赤字の黒字化を後にすることでよいのか。理屈で考えても、絶対にそうしてはなりません。
例えば現状、いろいろなところに1,000万円の未払い(支払期日を過ぎても支払っていないもの)があるとします。
事業赤字が毎月300万円出ているということは、単純に考えて、毎月300万円の未払いを発生させなければ、資金繰りはまわらないことになります。(減価償却費とか、回収条件・支払条件とか、細かいことは抜きにして考えます。)
未払い先への交渉を先にし、事業赤字の黒字化を後にするということは、この例でいえば、1ヶ月ごとに300万円の未払いが発生することになり、未払い先への交渉をいくら行っても、新たな未払いがどんどん発生することになってしまいます。未払いが1ヶ月ごとに、
1,000万円→1,300万円→1,600万円→1,900万円→2,200万円→2,500万円
とどんどんふくらんでしまう、とても恐ろしいことになってしまいます。そのため、事業赤字の黒字化は、すぐにでも行わなければならないことになります。毎月300万円の赤字の状態から、毎月赤字は発生しないトントンの状態までもってこれれば、新たな未払いは発生しなくなり、現状の未払いの1,000万円をどうしていけばよいのか、考えるだけですみます。
また、トントンの状態からもっとがんばって、毎月100万円黒字を出せるようになれば、未払いの1,000万円は、毎月100万円ずつ解消していくことになります。
そのため、未払いの一番の解消策は、事業赤字の黒字化、ということになります。いくら未払い先への交渉がうまくいっても、事業赤字を垂れ流しにしてどんどん未払いを増やしてしまえばなんともなりません。
それぞれの状態を比較してみると、
毎月300万円の赤字は1ヶ月ごとに未払いの総額はこうなる
1,000万円→1,300万円→1,600万円→1,900万円→2,200万円→2,500万円
毎月トントンの状態は1ヶ月ごとに未払いの総額はこうなる
1,000万円→1,000万円→1,000万円→1,000万円→1,000万円→1,000万円
毎月100万円の黒字は1ヶ月ごとに未払いの総額はこうなる
1,000万円→900万円→800万円→700万円→600万円→500万円
こう考えると、未払いの一番の解消策は、事業赤字の黒字化であることが一目瞭然です。
まとめると、資金繰りを良くするためには、事業赤字の黒字化と未払い先への交渉を、同時に行うべきです。
よく、未払い先の反応が心配だから未払い先への交渉を先に行って、それが落ち着いたら事業赤字の黒字化を行っていきたい、というのんきな経営者がいますが、それではスピードが遅すぎるのです。経営者の判断としては、失格です。
もう一度言いますが、未払いの一番の解消策は、事業赤字の黒字化です。事業赤字の黒字化と未払い先への交渉は、同時に行ってください。
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