売掛金を担保にできないか?
担保といえば、不動産、有価証券、預金などがまっさきに思い浮かびます。ただ、そのような担保となるようなものがなかったり、既存の融資で目いっぱい担保を使っていたりする場合。無担保では銀行は融資を出してくれないとすると、もう融資を受ける方法がない、ということになります。
その場合、売掛金が担保にできないか、考えます。売上が一定である場合、売掛金も常に一定(多少の上下はあっても)であるのが通常です。そのため、一定して企業に存在する売掛金は、担保の一つとして考えやすいです。
例えばいつも売掛金が5,000万円ある企業の場合、売掛金の内容を全て精査して、2,500万円を担保評価とする、というように、実務では行われます。ただ、売掛金といっても、いろいろなタイプの売掛金があります。
そのタイプによって、担保として見やすい売掛金と、そうでない売掛金とに分かれます。
1.継続的な得意先に対するものかどうか
毎月継続的に売上が発生する得意先に対する売掛金は、常に一定して売掛金が存在することになるため、安定した担保として、担保価値を見やすいです。
一方、単発で売上が発生した得意先に対する売掛金は、売掛金は一定して存在するということにはならないため、担保として見にくくなります。
2.債権譲渡禁止特約を結んでいるかどうか
取引契約書等を交わし、その中で債権譲渡禁止特約、つまり売掛金は第三者に譲渡しないものとする、という特約が結ばれている得意先に対する売掛金は、担保とすることはできません。そのような特約が結ばれていないか、そもそも得意先と取引契約書をわざわざ交わしていないのであれば、その得意先に対する売掛金は担保として見やすくなります。
3.売掛先の業況はどうか
そもそも、業況が芳しくない得意先に対しての売掛金は、その得意先が倒産して回収できなくなってしまう可能性が高いので、担保として見にくいです。売掛金を担保とした融資を検討する場合は、その売掛金の担保価値を、以上のように見ていきます。
また、売掛金を担保とした融資を私たちがご提案するにあたって、よく聞かれる質問は、「売掛金を担保とすると、その売掛先に、売掛金を担保とした事実が知られ、信用不安が起こってしまうのではないか。」ということです。
売掛金を担保にするためには、
- 「通知」売掛先に対し、売掛金を担保にしたことを通知する。
- 「承諾」売掛先から、売掛金を担保にしたことについて承諾をもらう。
- 「登記」売掛金を担保にしたことを、商業登記簿(売掛金を担保にして融資を受けた企業の登記簿)に登記する。
この3つ、いずれかを行わなければなりません。1.2の方法は、当然、売掛先に対し、売掛金を担保とした事実が知られてしまうことになります。しかし3の方法は、あくまで融資を受けた企業内でのことなので、売掛先に対し、売掛金を担保とした事実が知られてしまうことはなくなります。
そのため、この方法を使えば、売掛先に知られることなく、売掛金を担保にして融資を受けることができます。
そうすると、次のような不安も経営者は感じてしまうことでしょう。「商業登記簿を銀行や取引先に提出する機会は多く、売掛金を担保にしていることが見られると、銀行や取引先から警戒されないか。」売掛金を担保にしたことは、商業登記簿の、別紙に記録されます。
そのため、その別紙を提出しなければ、よいことになります。最後に、売掛金を担保にした融資はどこで受けられるのか。
売掛債権担保融資は、私たちが800社弱の事例を研究してきたかぎりでは、
1.信用保証協会の制度を利用して
2.ノンバンク
この2つです。ただ、実務的な話をしますと、信用保証協会の保証を付けた売掛債権担保融資では、今まで述べたような「5,000万円の一定した売掛金総額に対して2,500万円の担保価値を見てその金額を融資する。」という方法ではなく、「1本の売掛金が発生し、それを担保として融資を受け、その売掛金が回収となったらその回収金を返済にあてる。」という方法がとられ、まとめていくらの融資を受けるという形ではないため、使い勝手はよくないかもしれません。
また、信用保証協会の保証を付けるということは、融資を出すのは銀行、ということになります。それであれば、信用保証協会とともに、銀行の審査も必要、ということになります。ただ銀行は、まだまだ売掛債権担保融資に及び腰です。
その理由は
- 売掛金を担保とすることはまだこの10年で広まってきたことであり、まだ実務的に慣れていないこと
- 売掛金を担保としたら、常に売掛金の現状の把握と管理が必要であるが、それにとても大変な労力がかかってしまうこと。
です。そのため、私たちが、売掛金を担保とした資金調達の相談を受ける場合、ノンバンク、その中でも売掛債権担保融資を専門的に行っているところを、紹介し、多くの金額がスムーズに受けられるように、アドバイスしています。
ただ、ノンバンクを使うということは、またそもそも売掛金まで担保にしなければ融資を受けられないということは、そういう状態の企業は、通常の銀行融資を受けることは困難な状況で、資金繰りがかなり逼迫している状況、ということになります。
そのため、ほとんどの場合、リスケジュール(既存の銀行融資の返済減額)とセットで、ご提案しています。
そういう危機的状況の会社は、リスケジュールで一気に資金の流出を減らし、売掛債権担保融資で一気に資金を確保し、それを会社再生資金として、そこから再生に向けスタートしなければ、数ヵ月後、破綻してしまうことが目に見えてしまいます。
そのあたりの判断は、経営者として難しいところだと思います。顧問税理士や、われわれのような資金繰り専門コンサルタント会社などに相談するのも一つの手です。今回は、売掛金を担保にできる、というお話をさせていただきました。売掛金を担保に融資を受けることができることを、覚えておいてください。
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