お金があるから1本返済することについて
資金繰り・資金調達の相談を受けていると、ときどき、このようなことを考える方がいらっしゃいます。「今は資金の余裕があるので、今のうちに1本、返済してしまいたい。」
例えば、ある融資が、残り返済期間が1年であるが、資金の余裕があるからそれをまとめて今のうちに返済しておく、というようなやり方です。
よほどお金が余っている企業ならともかく、今は資金の余裕があるから返済をしておくという考え方、これは、資金繰りを考えていない考え方です。
事業活動を行っていると、売上が大きい月もあれば、小さい月もあります。売上が大きい月の売上代金の回収があると、資金の余裕ができます。
しかし、一方で、売上入金が少なく、仕入支払が多い月もあります。そのような月は、一気に資金が減少してしまいます。基本的に、当期利益+減価償却費で計算される年間キャッシュフローが年間返済額を十分上回るのでないかぎりは、ある時にお金が余っているからといって、借入を1本返済しておくのは、とても危険な行為であると言えます。
銀行にお金を返済することには労力はいりませんが、借りることにはとても労力がいります。なぜ、せっかくの労力をかけて借りたお金を、簡単に返済してしまえるのでしょうか。
例えばある融資の残高が1,000万円、残り期間は1年で、今資金の余裕があるからといってそれをまとめて返しても、また必要なときは1,000万円借りることができるだろう、というように考える方がいますが、それはとても甘い考え方です。
業績が芳しくなければ、前までは借りることができた金額は、借りることができなくなるのです。業績が良くなっていても、銀行の方針が変わっていれば、借りることができなくなるのです。担保価値が下がって、今まで借りることができた金額が借りることができなくなるのです。
資金繰りについて、もっと慎重になってください。返さなくていい融資は、返さないでください。その行為が、資金繰り破綻を招きます。
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