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銀行から疑いの目を向けられる決算書の「貸付金」勘定

貸付金とは?会社の資金を圧迫するリスクを理解しよう

経営者の皆さん、会社の決算書を見たとき「貸付金」という項目が大きく膨らんでいませんか?この一見何気ない項目が、実は会社の財務状況を大きく左右し、銀行からの融資審査にも影響を与える重要な指標となっています。

 

今回は貸付金の基本的な知識から、なぜこれが会社の資金繰りを圧迫するリスク要因となるのか、そしてどのように対処すべきかについて解説します。

 

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貸付金の基本(定義・仕訳・種類)

貸付金とは、会社が他者(従業員、役員、関連会社など)にお金を貸し付けた際に計上される資産科目です。つまり、会社の資金が外部に流出している状態を示します。

 

貸付金が発生した際の基本的な仕訳は以下のようになります。

 

(貸付時)

借方:貸付金 XXX円 / 貸方:現金預金 XXX円

 

(返済時)

借方:現金預金 XXX円 / 貸方:貸付金 XXX円

 

貸付金は主に以下の種類に分けられます。

 

短期貸付金:1年以内に回収予定の貸付金。流動資産に計上されます。

 

長期貸付金:1年を超えて回収予定の貸付金。固定資産の投資その他の資産に計上されます。

 

役員貸付金:会社から役員(社長や取締役など)への貸付金。これは特に注意が必要な項目です。

 

関係会社貸付金:子会社や関連会社への貸付金。グループ間の資金援助としての性格を持ちます。

貸借対照表での位置づけと問題点

貸付金は貸借対照表(バランスシート)上では資産の部に計上されます。しかし、この「資産」が実質的には会社にとって有効活用されていないお金である点が大きな問題です。

 

例えば、1,000万円の現金と1,000万円の貸付金を持つ会社と、2,000万円の現金を持つ会社では、同じ2,000万円の資産を持っていても、実際に使える資金は大きく異なります。

 

貸付金が貸借対照表上で問題視される理由は主に以下の点です。

 

資金の流動性の低下:貸付金は現金と違い、すぐに使える資金ではありません。特に返済の見込みが不明確な場合、実質的には凍結された資産と見なされます。

 

回収可能性の不確実さ:貸付金は必ずしも予定通りに回収できるとは限りません。特に経営不振の取引先や関連会社への貸付は、回収不能になるリスクを伴います。

 

資産の質の問題:銀行や投資家は単に資産の総額だけでなく、その質も重視します。貸付金は「質の低い資産」と見なされがちです。

 

特に中小企業で多く見られるのが、経営者への貸付金(役員貸付金)です。会社と個人の財布が混同され、会社のお金を個人的な用途で使った結果、貸付金として計上されるケースが少なくありません。

 

こうした状況は、銀行からの信用低下を招き、融資審査に悪影響を及ぼします。銀行は「自社の資金繰りが厳しいのに、なぜ他者にお金を貸せるのか」と疑問を抱くからです。

貸付金が発生する原因と経営への影響

多くの中小企業で貸付金が発生するのには、いくつかの典型的なパターンがあります。貸付金は一時的な資金融通として発生することもありますが、長期間にわたって残り続けると会社経営に深刻な影響を及ぼします。ここでは、貸付金が発生する主な原因と、それが経営にもたらす具体的な影響について解説します。

取引先や子会社への資金援助のリスク

中小企業では、取引先や子会社が資金繰りに困った際に、銀行融資の代わりとして資金を貸し付けるケースがよく見られます。こうした「助け合い」の精神は素晴らしいものですが、ビジネス判断として冷静に評価する必要があります

 

取引先への貸付金が発生する主な理由と問題点は以下のとおりです。

 

重要取引先の経営危機への対応:主要取引先が経営危機に陥った場合、その企業との取引継続のために資金援助を行うケースがあります。しかし、これは自社の資金繰りを犠牲にして他社を救済することになり、自社の経営基盤を揺るがすリスクを伴います。

 

子会社や関連会社の資金不足:グループ企業の一角が資金不足に陥った場合、親会社からの資金援助として貸付が行われます。しかし、子会社の経営状況が改善しなければ、その貸付金は回収困難になる恐れがあります。

 

取引先や子会社への貸付金は、以下のようなリスクをもたらします。

 

取引先の倒産リスク:資金繰りが悪化している取引先は、そもそも倒産リスクが高い状態にあります。そのような企業に資金を貸し付けることは、貸付金が回収不能になる可能性を高めます。

 

連鎖倒産のリスク:取引先への過度な資金援助は、最悪の場合、取引先の倒産と共に自社も資金繰りが行き詰まり、連鎖倒産に至る危険性があります。

経営者個人への貸付がもたらす問題

中小企業で最も頻繁に見られるのが、経営者自身への貸付金(役員貸付金)です。多くの場合、これは意図的な資金の借り入れというよりも、会社と個人の財布の区別が曖昧になった結果として発生します。

 

経営者への貸付金が発生する主なケースは以下のとおりです。

 

個人的な支出の会社経費計上:個人的な支出(住宅ローンや生活費など)を会社の資金から支払い、それを貸付金として処理するケース。

 

仮払金の精算不足:経営者が事業資金として一時的に引き出した仮払金を精算せず、結果的に貸付金として残ってしまうケース。

 

私的流用:会社の資金を個人的な投資や趣味などに流用するケース。

 

経営者個人への貸付金は、以下のような深刻な問題を引き起こします。

 

税務上の問題:役員貸付金に対して適正な利息が設定されていない場合、税務調査で「役員への利益供与」と判断され、追徴課税のリスクがあります。

 

銀行からの信用低下:銀行は役員貸付金を「経営規律の欠如」の表れと見なし、融資審査において厳しい目を向けます。

 

株主や社員からの信頼喪失:会社資金の私的流用と見られかねない役員貸付金は、株主や従業員からの信頼を損なう恐れがあります。

杜撰な経理処理と粉飾決算のリスク

貸付金の中には、実際の資金貸付ではなく、経理処理の誤りや意図的な粉飾によって生じるケースもあります。これは特に危険な状況です。

 

杜撰な経理処理による貸付金の発生例は以下のとおりです。

 

売掛金の貸付金への振替:回収が難しくなった売掛金を、貸付金に振り替えるケース。これにより表面上の売掛金回転率は改善しますが、実質的な問題は解決していません。

 

架空の資産計上:実際には存在しない資産を貸付金として計上し、バランスシートを良く見せるケース。

 

経費の貸付金処理:本来は経費として計上すべき支出を貸付金として処理し、利益を過大に見せるケース。

 

こうした処理は、以下のような深刻なリスクをもたらします。

 

粉飾決算の指摘:税務調査や会計監査で粉飾決算と指摘される可能性があります。最悪の場合、刑事責任を問われるケースもあります。

 

経営判断の誤り:実態を反映していない財務諸表に基づいて経営判断を行うことで、誤った意思決定を招く恐れがあります。

 

突然の資金ショート:架空の資産を前提とした資金計画は、実際の資金繰りで行き詰まる危険性があります。

なぜ銀行は貸付金を嫌うのか?融資審査への影響

財務コンサルタントとして融資審査に携わってきた経験から言えることは、貸付金の多い企業は融資審査で必ず厳しい評価を受けるということです。銀行が企業の財務内容を分析する際、貸付金の存在は重大な「赤信号」と見なされます。なぜ銀行はこれほどまでに貸付金に厳しい目を向けるのでしょうか?

貸付金は「不良資産」とみなされる

銀行の融資担当者は、企業の貸借対照表を見る際、単に数字の大小だけでなく、資産の「質」を重視します。その視点から見ると、貸付金は最も質の低い資産の一つと評価されます。

 

銀行が貸付金を不良資産と見なす主な理由は以下のとおりです。

 

回収の不確実性:現金や預金とは異なり、貸付金はすぐに使える資金ではありません。特に長期間滞留している貸付金は、回収の可能性に大きな疑問符がつきます。

 

事業活動への不貢献:貸付金は本業の事業活動に貢献していない「遊休資産」です。銀行は企業の本業による収益力を重視するため、事業に貢献しない資産に資金が固定化されていることを問題視します。

 

潜在的な損失リスク:長期間回収されていない貸付金は、実質的に回収不能になっている可能性が高いと判断されます。会計上は資産計上されていても、実質的には損失と同等と見なされることがあります。

 

具体的なケースで考えてみましょう。ある企業の貸借対照表に1,000万円の貸付金が計上されているとします。銀行の融資担当者は次のような考え方をします。

 

「この1,000万円は、本来であれば設備投資や運転資金として活用できたはずの資金。それが外部に流出し、事業に貢献していない。さらに、回収の見込みも不透明であれば、実質的にはこの1,000万円分の資産価値は大幅に目減りしていると考えるべきだ」

 

そのため、銀行は融資審査の際、貸付金を実質的な自己資本から控除して企業の財務力を評価することがよくあります。例えば、純資産が3,000万円、貸付金が1,000万円の企業があれば、銀行は実質的な自己資本を2,000万円程度と見なす可能性があります。

資金使途の不透明さが信用低下につながる

銀行が貸付金を問題視するもう一つの大きな理由は、資金使途の不透明さです。特に経営者個人への貸付金(役員貸付金)は、「会社のお金が適切に管理されていない」という印象を与えます。

 

資金使途の不透明さが引き起こす問題には以下のようなものがあります。

 

経営規律への疑問:会社と個人の財布が明確に分離されていないことは、経営者の財務規律に対する疑問につながります。銀行は「自社の資金管理ができていない経営者に、融資した資金を適切に管理できるのか」という懸念を抱きます。

 

隠れた経営問題のシグナル:貸付金、特に役員貸付金の存在は、企業に何らかの経営上の問題があるサインと解釈されることがあります。例えば「本業の利益が十分でないため、経営者の生活費を賄えず、会社からの借入に頼っている」などの推測につながります。

 

返済能力への疑義:銀行融資の基本は「返済能力の評価」です。貸付金が多い企業は、自社の資金を回収できていないにもかかわらず、銀行からの借入金は返済できるのか、という疑問を生じさせます。

 

こうした懸念が、銀行の融資姿勢に具体的にどう影響するかを見てみましょう。

 

融資拒絶のリスク:貸付金の額が自己資本に比べて過大な場合、それだけで融資が謝絶される可能性があります。特に創業間もない企業や、財務基盤が弱い企業では致命的です。

 

金利上乗せ:貸付金があることで企業の信用リスクが高いと判断され、金利が上乗せされることがあります。例えば、通常なら年利1.5%の融資が、2.0%以上になる可能性もあります。

 

融資額の減額:希望する融資額から貸付金相当額が控除されるケースもあります。「1,000万円の設備資金融資を希望しても、役員貸付金が500万円あれば、まずはそれを回収して充当すべき」という判断がなされることもあります。

 

厳しい担保・保証条件:貸付金の多い企業に対しては、通常より厳しい担保設定や個人保証が求められることがあります。

 

ある中小企業経営者からこんな相談を受けたことがあります。「決算書上の数字は良いのに、なぜ銀行は融資してくれないのか?」調査してみると、総資産の30%以上が役員貸付金だったのです。銀行からすれば、「自分の会社からお金を借りている経営者に、銀行がさらにお金を貸す理由はない」という判断になってしまいます。

貸付金が引き起こす具体的なデメリット

ここまで貸付金の基本や銀行の見方について解説してきましたが、ここからは貸付金が企業にもたらす具体的なデメリットについて、実務経験に基づいた事例を交えながら詳しく説明します。

銀行融資が受けにくくなる

貸付金が多い企業は、新規融資の獲得が著しく困難になります。とりわけ資金需要が高まる局面では、この問題が深刻化します。

 

融資申込の却下率上昇:当事務所のデータによると、総資産に占める貸付金の割合が20%を超える企業では、新規融資の申込が却下される確率が通常の約3倍に上昇します。

 

実例をご紹介しましょう。ある製造業の社長から「緊急の設備投資のための融資が、どの銀行からも断られた」という相談を受けました。決算書を確認すると、売上は安定しており、利益も黒字。しかし、役員貸付金が8,000万円計上されていました。この金額は純資産とほぼ同額だったのです。銀行からは「まずは社長からの借入金を回収して投資に充てるべき」という指摘を受けていました。

 

融資限度額の縮小:メインバンクとの融資取引があっても、貸付金の存在により融資限度額が大幅に縮小されるケースがあります。例えば、通常なら1億円の融資枠が設定されるところ、5,000万円の役員貸付金があれば、融資枠は5,000万円に制限されるといった事態が発生します。

 

事業拡大の機会損失:融資が受けられないことで、新規事業への投資や設備更新ができず、競争力が低下するリスクがあります。特に成長期の企業にとって、この機会損失は将来の収益に大きく影響します。

金利上昇・融資条件の悪化

仮に融資が受けられたとしても、金利や融資条件は明らかに不利になります。

 

金利上乗せの実態:貸付金の多い企業への融資では、同業他社と比較して0.5%~1.0%程度の金利上乗せが見られます。年間借入額が1億円の企業であれば、毎年50万円~100万円の追加金利負担が発生することになります。

 

担保・保証の厳格化:通常なら無担保で受けられる融資も、貸付金が多い場合は不動産担保や個人保証が要求されることが多くなります。さらに、担保掛目(担保評価額に対して融資可能な金額の割合)も低く設定される傾向があります。

 

返済期間の短縮:一般的に設備資金なら7年、不動産取得資金なら20年といった返済期間が設定されますが、貸付金が多い企業では3~5年といった短期返済を求められるケースもあります。これにより月々の返済負担が大きくなり、資金繰りを圧迫します。

金融機関からの厳しい監視

貸付金の多い企業に対しては、融資実行後も金融機関から厳しい監視の目が向けられます。

 

頻繁なモニタリング:通常の融資先よりも頻繁に業況報告や試算表の提出を求められます。場合によっては月次での報告が必要になることもあります。

 

貸付金の返済計画提出要請:貸付金、特に役員貸付金について、具体的な返済計画の提出を求められることがあります。この計画の進捗状況によっては、既存の融資の継続にも影響が出る可能性があります。

 

財務改善要請:「自己資本比率の改善」「役員貸付金の圧縮」などの財務改善計画の策定と実行を求められることがあります。これらの要請に対応できない場合、融資の継続が危ぶまれることもあります。

 

あるサービス業の経営者は、金融機関からの厳しい監視に疲弊し、こう漏らしていました。「銀行担当者が毎月のように来社し、貸付金の返済状況を確認していく。まるで犯罪者のような扱いを受けているようで精神的に辛い」。

 

これらのデメリットは、単に融資面だけでなく、企業経営全体に大きな負担をもたらします。特に、経営者自身の精神的負担は計り知れません。次章では、このような状況から脱却するための具体的な解決策について解説します。

貸付金の解決策|経営者が今すぐできる対処法

貸付金の問題は一朝一夕に解決できるものではありませんが、計画的に対処すれば必ず改善できます。私がこれまでコンサルティングしてきた多くの企業でも、適切な対策を講じることで貸付金問題を解消し、金融機関からの信頼を回復したケースは数多くあります。

経営者自身が返済する方法

役員貸付金の場合、最も直接的な解決策は経営者自身が会社に返済することです。

 

個人資産の活用:経営者個人の預金や投資資産を活用して返済するのが最も明快な方法です。銀行からの評価も即座に改善します。

 

ある建設業の社長は、個人で保有していた不動産を売却し、5,000万円の役員貸付金を一括返済しました。その結果、銀行からの信頼を取り戻し、設備投資向けの新規融資も滞りなく受けられるようになりました。

 

分割返済計画の策定:一括返済が難しい場合は、具体的な分割返済計画を策定し、確実に実行することが重要です。例えば「3年間で毎月○○万円ずつ返済する」といった具体的な計画を立て、経営者個人の預金口座から会社口座への自動振替設定をするなど、確実に実行できる仕組みを作りましょう。

 

個人借入の活用:経営者個人が銀行から借入を行い、それを会社に返済するという方法もあります。ただし、この方法は経営者個人の借入負担が増えるため、返済計画は慎重に立てる必要があります。

役員報酬や会社資産の活用

経営者個人に十分な資産がない場合は、会社の経営資源を活用した返済方法も検討できます。

 

役員報酬の調整:役員報酬を一時的に削減し、その分を貸付金の返済に充てる方法があります。例えば、月100万円の役員報酬を80万円に減額し、差額の20万円を毎月返済に充てるといった方法です。

 

役員賞与の活用:役員賞与を現金で受け取るのではなく、貸付金の返済に充当する方法も効果的です。決算賞与1,000万円を全額貸付金返済に充てれば、一気に残高を減らすことができます。

 

会社所有の遊休資産売却:会社が保有する使用頻度の低い資産(不動産、車両、美術品など)を売却し、その資金で経営者が貸付金を返済する方法も考えられます。この場合、適正な価格での取引であることを証明できる資料を残しておくことが重要です。

生命保険を使った返済計画

経営者に万一のことがあった場合のリスクも考慮した返済計画として、生命保険を活用する方法があります。

 

解約返戻金の活用:経営者個人が加入している生命保険の解約返戻金を活用して返済する方法があります。特に長期間加入している保険は、まとまった解約返戻金が期待できる場合があります。

 

新規の経営者保険の設計:会社が契約者(保険料負担者)、経営者個人が被保険者、会社が受取人という形で生命保険を新規に契約し、将来の死亡保険金や解約返戻金で貸付金を返済する計画を立てることもできます。この方法は、経営者に万一のことがあった場合のリスクヘッジにもなります。

 

製造業の60代経営者は、2,000万円の役員貸付金があり、個人資産での返済が難しい状況でした。そこで会社を契約者とする終身保険に加入し、「経営者が現役引退する65歳時点で保険を解約し、その返戻金で貸付金を清算する」という計画を立てました。銀行にこの計画を説明し、理解を得ることができました。

会計処理の見直しで負担を減らす

場合によっては、会計処理の見直しによって実質的な負担を軽減できるケースもあります。

 

経費の適正計上:本来経費となるべき支出が誤って貸付金に計上されているケースがあります。例えば、事業に関連する交際費や出張費などが経営者の立替払いとなり、精算不足で貸付金になっているケースです。こうした支出を適切に経費として計上し直すことで、貸付金を減らせる可能性があります。

 

資本取引への振替:状況によっては、貸付金の一部を出資金や資本準備金に振り替えることも検討できます。これにより貸借対照表上の貸付金は減少し、自己資本は増強されます。ただし、この処理には税務上の注意点があるため、専門家への相談が必須です。

 

貸付金と借入金の相殺:会社が経営者から借入をしている場合(役員借入金)は、貸付金と借入金を相殺することで、両方の残高を減らせます。

 

いずれの方法を選択するにせよ、具体的な返済計画を文書化し、その計画に沿って着実に実行していくことが重要です。また、計画を銀行にも開示することで、「問題を認識し、積極的に解決に取り組んでいる」という姿勢を示すことができます。これだけでも銀行の評価は大きく変わります。

 

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貸付金が会社の税務に与える影響と注意点

貸付金は会計上の問題だけでなく、税務上も様々な影響と注意点があります。特に税務調査では貸付金が重点的に調査されるケースが多いため、適切な処理が必要です。

受取利息が生じるケースとは?

税務上、特に注意が必要なのが役員貸付金に対する利息の問題です。

 

みなし利息の課税:役員貸付金に対して適正な利息を設定していない場合、税務上は「無利息貸付けによる経済的利益の供与」とみなされ、適正金利に基づいた「みなし利息」が課税対象となる可能性があります。

 

例えば、役員貸付金1,000万円に対して年利3%の適正利息を設定していない場合、年間30万円分の経済的利益を役員に供与したとみなされ、役員の給与所得として課税されることがあります。

 

適正利率の設定:役員貸付金に利息を設定する場合、一般的には日本銀行の「基準割引率及び基準貸付利率」に1.0%程度を上乗せした水準が適正とされています。ただし、個別の状況により判断が異なる場合もあるため、税理士など専門家への相談が望ましいでしょう。

 

利息の経理処理:役員貸付金に利息を設定する場合、会社側では「受取利息」として収益計上し、役員個人は「支払利息」として確定申告で経費計上します。この経理処理が正確に行われていることも税務調査のポイントです。

法人税への影響を理解する

貸付金は法人税の計算にも様々な影響を与えます。

 

貸倒引当金の計上:取引先や関連会社への貸付金が回収困難になった場合、貸倒引当金を計上することがあります。貸倒引当金の計上には税務上の要件があり、安易に計上すると税務調査で否認される可能性があります。

 

貸倒損失の計上タイミング:貸付金が完全に回収不能となった場合には貸倒損失を計上できますが、その認定基準は厳格です。具体的には、債務者の破産手続き開始や、回収のための法的手続きを行ったにもかかわらず回収できなかった場合などが要件となります。

 

ある企業では、回収が難しくなった取引先への貸付金3,000万円を安易に貸倒損失として計上したところ、税務調査で否認され、法人税だけでなく、延滞税と過少申告加算税を含めて1,000万円以上の追徴課税を受けることになりました。

 

グループ法人間の貸付:関連会社への貸付金には、税務上の「移転価格税制」や「寄附金課税」の問題が生じる可能性があります。特に海外子会社への貸付は、国際税務の観点からも注意が必要です。

 

このように、貸付金の税務処理は複雑で、誤った処理をすると思わぬ追徴課税を受けるリスクがあります。税理士などの専門家と密に連携し、適切な処理を行うことが重要です。

銀行や税務署への説明|貸付金の正しい開示方法

貸付金の存在は必ずしも隠すべきものではなく、適切に説明・開示することで信頼関係を構築できます。むしろ、隠そうとすることで、より大きな不信感を招くリスクがあります。

銀行への説明のポイント

銀行への説明で重要なのは、貸付金の発生理由と返済計画の明確化です。

 

発生の経緯を正直に説明:貸付金が発生した背景や理由を隠さず説明することが信頼関係の第一歩です。「会社の資金に余裕があり、一時的に個人の住宅購入資金に充てた」「重要取引先の一時的な資金繰り支援のために貸し付けた」など、事実を正確に伝えましょう。

 

具体的な返済計画を提示:単に「返済します」と言うだけでは不十分です。いつまでに、どのような方法で、いくら返済するのかを具体的に示すことが重要です。例えば「今後3年間で毎月20万円ずつ返済し、3年後に残額を一括返済する計画です」などと具体的なスケジュールを示しましょう。

 

返済の意思と能力を示す:特に役員貸付金の場合、返済する意思と能力があることを示すことが重要です。経営者個人の資産状況や収入見込みなど、返済能力を裏付ける情報を提示できるとより説得力が増します。

 

あるIT企業の経営者は、3,000万円の役員貸付金について「個人の不動産投資に使用したが、その不動産は既に売却手続き中で、3ヶ月以内に全額返済する」と銀行に説明しました。不動産売却の証明として、不動産会社との媒介契約書と買付証明書のコピーも提示したところ、銀行の理解を得ることができました。

税務調査で指摘されないための準備

税務調査では貸付金、特に役員貸付金が重点調査項目となることが多いため、万全の準備が必要です。

 

貸付金の実在性を証明する書類:貸付金の発生から現在までの取引記録、金銭消費貸借契約書、利息計算書など、貸付の実在性を証明できる書類を整備しておきましょう。

 

返済計画と返済実績の記録:返済計画書と実際の返済記録を整理しておくことで、「返済する意思と能力がある」ことを示せます。定期的な返済が行われていれば、税務調査での評価も良くなります。

 

利息設定の根拠資料:役員貸付金に利息を設定している場合は、その利率の合理性を説明できる資料(市場金利の調査資料など)を準備しておきましょう。

 

税務調査の経験が豊富な税理士からは「役員貸付金があると必ず詳細な質問を受けるが、発生理由と返済計画が明確で、実際に返済も進んでいれば、それ以上の追及はあまりない」という声も聞かれます。

 

銀行や税務署への説明は、事前に専門家のアドバイスを受けながら準備することで、より説得力のある内容にすることができます。信頼関係の構築は、問題解決の大きな一歩となります。

まとめ

企業の決算書の、資産の部には、「貸付金」勘定があることがあります。

 

この「貸付金」勘定、銀行から、企業の不良資産ではないかと疑いの目を向けられることの多い勘定科目の一つです。

 

なぜならば、「貸付金」勘定で計上される貸付金は、将来、本当に全額、企業に返ってくるものかどうか不確実だからです。「貸付金」が将来、確実に返済されるかどうかを調べるために、まず銀行は、「貸付金」勘定の金額の内訳、つまり企業は誰にいくらの貸付を行っているかについて、調査します。決算書の付属明細を見ることによって調査することが多いです。

 

そして、あなたの会社の貸付先の、以下のことを銀行はあなたの会社に聞いてきます。

 

・貸付先の内容

  企業であれば業種・あなたの会社との関係・業況等

  個人であればあなたの会社との関係・資産内容等

 

・貸付をした理由

 

・少額ずつでも定期的に返済を受けているかどうか

 

一つ一つていねいに銀行に説明し、貸付金が、将来返ってくる見込みのない不良資産ではないことを銀行に納得させる必要があります。

特に、少額ずつでも定期的に返済を受けている、ということは、不良資産でないことを証明するためにとても重要です。もしそのような状態になっていなければ、貸付先と交渉して、定期的な返済を受けるようにしてください。また、将来のある時期に一括、あるいは一部でも、返済を受ける約束になっていれば、それを証明する資料(貸付契約書等)を銀行に見せてください。

 

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