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社員に数字を公開しない

最近、社員教育をする機会が多く、特に数字に対する意識付けをして欲しいと望まれることが多い。社長としては、どのように、どこまでの数字を見せるべきか悩んでおられ、その悩みが解消できないので、結局数字を見せないというのが現実のようである。しかし、思い切って数字を公開し、社員に教育する方が会社は必ずよくなる。

社員に数字を公開しない

私 :「社員の方は、会社の業績を知っていますか。」

 

社長 :「知らないよ。教えても理解できないし、見ようともしない。」

 

私 :「そうですか。」

 

社長 :「以前から何回も見せているが、全く理解しようとしない。無理だ。」

 

会社の業績を経理から出てくる試算表や会社独自でまとめた業績資料を、何の説明もなく社員に見せても、それは絶対に理解されない。なぜかというと、見方が分からず、数字が並んでいるだけなので、興味がわかないからである。逆を言えば、興味がわくような見せ方や説明があると、多くの社員は興味を示す。それは、会社の将来は自分の将来でもあるからである。人生の多くの時間は、会社で過ごすということを理解すれば、興味はおのずと湧いてくる。

 

以前、若い社員にこんな質問をしたことがある。

 

「粗利という言葉を社内でよく使っていますが、粗利とはいったい何ですか。」

 

その答えは、びっくりするものであった。

 

「粗利は社長の給与です。」

 

本当にその人は、そう思っていた。だから、会社の指示で粗利の改善と言われても、どうせ社長の給与が上がるだけだという思いで、その社員は本気で業務改善に取り組んでいなかった。至極当たり前の発想である。

これが数字を理解していない弊害である。正しく伝えていれば、業務改善はもっと以前から、本気で取り組んでいたはずである。

 

正しい計数教育と数字の公開により、社員一丸となって業務改善に取り組むことが望まれる。また、そのことが社員も経営者にとっても、幸せになる一歩である。それでは具体的に、どうすれば良いか。売上や経費の情報は、社外に出したくないものである。

 

だから、伝えないという会社も多い。しかしその判明、伝えたいという気持ちもある。そこで、売上高・販売費・管理費・営業外収支・特別損益の合計をひとまとめにして、最後の当期純利益を記す方法もある。この見せ方で、なるほどと思う社員と、なんでこんなに固定費がかかるのかと疑問に思う社員に分かれる。この疑問が社員の成長の始まりである。社員への計数教育の時は、必ず社員から質問をする時間を持ち、何もない場合は、こちらから投げかけて興味を持つようにもっていくことが大切である。また、「一回研修したからあとは分かっただろう」は、禁物である。

 

これまで興味がないことに対して、たった一回で興味を持つような人は多くはない。理解度によるが複数回実施する計画で社員の成長を見届けて欲しい。

この記事の著者

  • 野上 智之

    公立大学法人北九州市立大学卒業、大手システム会社を経て、教育研修会社での新規部門立上げや西日本責任者としての実践により、収支損益の黒字化と人財育成がなければ、企業は元気にならないという強い信念のもと中小企業に特化した経営コンサルタントに転身。現在も10社を担当し各地でセミナーや研修を実施したり、地域金融機関との連携を実施。行政書士試験合格、宅地建物取引士、動産評価アドバイザー(TAA)、中小企業庁ミラサポ専門派遣登録専門家、プッシュ型事業承継支援高度化事業登録専門家(中小企業庁)、再生支援ネットワーク会議メンバー(広島)

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